安保法制と大衆路線 平和主義「公明」が強調

「歯止め」に説明の力点

 公明党の機関誌「公明」に連載された「『大衆とともに』公明党の歩み」が9月号の32回「憲法の平和主義守った公明党―安保法制整備への『閣議決定』に“専守防衛堅持”等盛り込む」で終了した。昨年の結党50年に合わせた連載だった。

 結党精神が創価学会の現在名誉会長である池田大作氏が行った演説にあることを同連載は綴(つづ)っていたが、宗教は理想を指向し、政治は現実に対応しなければならない。そこで支持団体と党との間に起こる葛藤があり、現在の安保法制をめぐっても同党はそのような課題を抱えている。

 演説の「大衆のために」を結党の原点とし、福祉重視のほか憲法9条尊重・平和主義を基本理念の一つに掲げ国政進出した同党は、改憲政党の自民党と対峙(たいじ)し、安保政策では自衛隊違憲論の旧社会党に近い野党だった。現在は自民党と連立を組み、集団的自衛権の限定行使を伴う安全保障関連法案の成立を目指す与党だ。

 この間には党内論議と政策転換があった。1981年に党大会で日米安保条約・自衛隊を認め、90年代にはPKO(国連平和維持活動)はじめ自衛隊海外派遣の各法整備に参画した。これらの論議においては抑制を効かせる「ブレーキ」役を自任している。今回の安保法制に対しても同じだ。

 一方、共産党は安保関連法案に誇張や飛躍で不安を煽(あお)る前衛主義的な大衆扇動を仕掛けている。「戦争法案」と呼んでデモ・集会を各地で組織し、機関紙「しんぶん赤旗」に法案に反対する元公明党議員も登場させている。昨年7月1日閣議決定後、二見伸明元公明党副委員長らに反対を語らせた。

 二見氏の最後の政治キャリアは自由党で小沢一郎氏と行動、再結成後の今の公明党とは疎遠だが、共産党・「赤旗」にとっては公明党時代の肩書と創価学会員の立場に価値がある。法案反対を反戦運動化してマスコミの反対世論を高めて「結党の原点」を問い詰め、創価学会を揺さぶり公明党を切り崩そうと狙う。

 公明党は法案に正確な説明を要するが、「公明」9月号同連載のタイトルには「原点」は守ったとの訴えがにじんでいる。安保法制に関する小見出しは、“切れ目”ない安保法制整備へ「閣議決定」/憲法9条下での自衛措置の限界示す/外国防衛目的の集団的自衛権認めず/PKOでの“駆けつけ警護”を可能に/自衛権発動「新3要件」に厳格な歯止め/「平和の党」の役割果たし堅実にリード/公明の党内議論、地方代表も含め15回に/平和安全法制に「三つの方針」/自衛隊海外派遣には“国会事前承認”――など。

 「武力行使に厳格な歯止めをかけ」、「あくまで自国防衛に限った措置であり、外国の防衛それ自体を目的とした集団的自衛権は認めていない」など要点をまとめた内容だ。

 機関誌で相応のページを割いての説明は、大衆路線を掲げながら与党として難しい舵取りに努力しているといえよう。

解説室長 窪田 伸雄