戦後70年の安保法制 理解促進訴える「自由民主」

民主党は影の首相談話を

戦後70年の安保法制

戦後70年談話を発表する安倍晋三首相=14日午後、首相官邸

 自民党の機関紙「自由民主」8月25日号は1面に「平和安全法制 国民の理解促進に全力」の記事、3面に安倍晋三首相が14日に発表した戦後70年の「安倍内閣総理大臣談話」を掲載した。

 首相談話は「二度と戦争の惨禍を繰り返してはならない。事変、侵略、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない。植民地支配から永遠に訣別し、すべての民族の自決の権利が尊重される世界にしなければならない。先の大戦への深い悔悟の念と共に、我が国は、そう誓いました」などと述べ、そこに「戦後日本の原点」があると訴えている。意は尽くされている。

 しかし、これに民主党は「安倍総理の戦後70年談話には、日本が植民地支配、侵略を行ったという明確な認識は記されていません」などと機関紙の「プレス民主」(8・21)に掲載された岡田克也代表の「70回目の終戦の日にあたって」で批判し、共産党も志位和夫委員長の「戦後70年にあたって」(「しんぶん赤旗」8・15)で村山首相談話の表現と比較して批判している。野党党首の談話は首相批判のために出しているとしか思えない。

 共産党はともかく、政権交代の可能性は遠くなっているとはいえ民主党はシャドー・キャビネットとして「次の内閣」を党内に組織しており、「ネクスト総理大臣」(影の首相)の岡田代表は、国内の与野党対決など意識せずに堂々と国を代表するような談話を発信するのが筋だ。

 それが首相談話と安保法制への批判に眼目をおいたものとなり、反対野党の次元に甘んじている。もし弁論大会なら、先に登壇した弁士の批判ばかりでは聴衆からはヤジが飛ぼう。どちらの談話が優れているか政権公約(マニフェスト)同様の競い合いをすべきだ。

 一方、「自由民主」1面は、安保関連法案について「国民の理解を深めるため、わが党は平和安全法制整備推進本部(本部長・江渡聡衆院議員)の下に『平和安全法制理解促進委員会』(委員長・衛藤晟一参院議員を設置した」(リード)と述べ、「わが党も『法案の持つ意味をさらに国民に理解していただけるように、さらに努力していかなければならない』(谷垣禎一幹事長)として、同委員会の役員らを全国都道府県連や支部の研修会に講師として派遣するなど、国会審議と並行して国民の理解促進を図っていく方針」という。

 「戦争法案」のレッテル貼りで、野党は戦前の日本に絡めて批判をし、これから政府が米国とともに戦争を起こすかのように反対デモや集会で不安を煽(あお)っている。これを好意的に報じるマスコミがあり、政権に打撃を与えるチャンスとしているからであろう。

 これに押されて政府・与党の「抑止力」の考えが正確に伝わらないのは問題だ。「戦争させない」「殺し、殺される」など法案反対の扇動文句は単純だが、憲法9条下の安保政策は多く説明を要する。誤解を解く「理解促進」は急務に違いない。

解説室長 窪田 伸雄