砂川判決 自衛措置に「集団」「個別」なし


詳解 集団的自衛権 安保法制案の合憲性(15)

日本大学名誉教授 小林宏晨

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 安倍内閣が集団的自衛権の限定的容認の根拠とした「砂川判決」を中心に本稿の結論としたい。

 最高裁は砂川事件の差し戻し判決(1959年)で、憲法の平和主義が「決して無防備、無抵抗を定めたものではない」とした上で、「わが国が、自国の平和と安全とを維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置を執り得ることは、国家固有の権能の行使として当然のこと」としている。

 この「自衛の措置」の中で、個別的自衛権と集団的自衛権の区別を行わずに、「国家固有の権能」つまり自然権であるとしている。最高裁は、憲法第9条はわが国が主権国として有する固有の自衛権を否定してはいないのだ。

 憲法は、前記自衛のための措置を、国際連合の機関である安全保障理事会等の執る軍事措置等に限定せず、わが国の平和と安全を維持するためにふさわしい方式または手段である限り、国際情勢の実情に則し適当と認められる以上、他国に安全保障を求めることを禁ずるものではない。

 わが国が主体となってこれに指揮権、管理権を行使し得ない外国軍隊は、たとえそれがわが国に駐留するとしても、9条第2項の「戦力」には該当しない。

 安保条約のごとき、主権国としてのわが国の存立の基礎に重大な関係を持つ高度の政治性を有するものが、違憲であるか否かの法的判断は、純司法的機能を使命とする司法裁判所の審査には原則としてなじまない。それが一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外にあると解するを相当とする。

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普天間飛行場に駐機しているMV22オスプレイ

 安保条約(およびこれに基くアメリカ合衆国軍隊の駐留)は、9条、98条第2項および前文の趣旨に反して違憲無効であることが一見極めて明白であるとは認められない。

 前記の最高裁判決を総合的に理解するなら、政府及び議会は自衛隊を合憲であると理解し、しかも裁判所が自衛隊を違憲であると判定する蓋然性が極めて低いことが結論付けられる。

 つまり憲法解釈を最終的に決定する有権解釈グループ(官僚、政治家及び裁判官)が自衛隊の存在を合憲と解釈し、しかも集団的自衛権の(限定的)適用を合憲と解釈する場合、学理解釈グループの主がいかに違憲論を叫んでも虚しい響きを増すだけである。

 世界における安全保障環境が劇的に不安定化している事実、そしてそれに対応する必要性についての確認不能が違憲グループの特徴を示しているからである。

 世界には絶対的安全は存在し得ない。抑止の理論も絶対的ではないし、抑止が機能しない場合もあり得る。しかし、相対的に抑止は安全性を高める。日本も普通の国家として抑止力を高める方向に転換することが望ましい。集団的自衛権の限定的適用は、その意味で不可欠であり、決して違憲ではない。

(終わり)