「安保」反対続く「プレ民」 下野後は社会党化しかねず
民主党の機関紙「プレス民主」は6月5日号、6月19日号、7月3日号、7月17日号と安全保障関連法案に反対するトップ記事が続いている。7月に入ってからは「『これは戦争をするか否かの法律』―安保法案の構造とその論点―」と題して元防衛官僚の柳澤協二氏(3日号)、「政府の安保法案は『違憲・危険・高価』な愚案―戦争法案阻止へ」と題して慶応大学名誉教授・弁護士の小林節氏(17日号)の講話を載せた。
柳澤氏は「安保法制は、平時から、準有事とも言うべき重要影響事態、そして多国籍軍協力や戦後の秩序維持まで、切れ目なく軍事協力ができる構造になっています。……日本有事でなくても米艦防護ができるということは、平時でも有事でもシームレスに(切れ目なく)軍事協力が可能になる。これは専守防衛政策の明らかな転換です」と述べている。
集団的自衛権行使の一部を容認する安保法制により日米同盟の機能性を高める側面を指摘したとも言えるが、「専守防衛」であっても一層の抑止力を求める必要があるはずだ。「専守防衛」は先に攻撃されてから反撃する考えで、実際には負ける率が高い。故に、攻撃されない抑止力こそ肝心要だ。日本だけの「専守防衛」は極東ソ連軍が仮想敵国であった自衛隊発足当時から不可能であり、米国の軍事力を頼みとする日米同盟が機能しなければならない。この機能性を上げられる安保法制で抑止効果は増す。
が、柳澤氏が懸念するのは「重要影響事態については、…その認定のハードルが低く、……非戦闘地域という要件が外され、…具体的イメージを言えば、今まではサマワに限定していたことが、ファルージャで可能になることです。つまり、前線部隊が取り仕切るような地域に、他国の補給部隊がのこのこ入っていく」など、自衛隊が戦争に巻き込まれる「可能性」が法律にあることについてである。
首相が「やらない」と明言しているが、論客を登場させて戦争の可能性を疑い、不信感を焚(た)き付けるばかりでは安保問題を政争の具とする堂々めぐりになる。民主党は政権を担ったこともあり、現場を知る制服組の意見を聞くなど建設的な提言をしてもよいのではないか。
民主党の政権交代へのメルクマールとなったのは2004年の有事法制修正合意など安保政策に責任を示したことだ。有事立法阻止を長年唱えた旧社会党と違って、当時は保守系議員も多く政権担当能力を思わせた。政権を失うまで集団的自衛権行使容認を主張する保守系政治家にも一定の発言力があったが、離党、分裂、落選で保守系議員は減り、野党に下ってからは力がなくなってしまった。
安保法制での対案も示さず、党首の岡田克也代表が一国に認められている集団的自衛権を「いらない」と発言し、回収になったが法案に「徴兵制」を示唆するなど時代錯誤なビラも配られた。こう「反安保」では、旧社会党化して万年野党となりかねない。
解説室長 窪田 伸雄





