「自由民主」の「安保」広報 首相ら集団的自衛権を説明

情報量で挽回の必要あり

「自由民主」の「安保」広報

安全保障関連法案を与党の賛成多数で可決する衆院本会議=16日午後、国会内

 自民党の機関紙「自由民主」の1面に安保法制(同党は平和安全法制と表記)に理解を求める内容が7月14日号、21日号、28日号と連続して載った。内側のページで「Q&A」は連載しているが、連続1面を張るとキャンペーン性が感じられる。

 ただ、安保テーマの1面展開は昨年7月7日号で7・1閣議決定(集団的自衛権一部容認)を取り上げて以来。野党側機関紙の反対キャンペーンに比べ、情報量で大きく水をあけられている。衆院選のように「先手必勝」といかず、安保法制に国民の理解を求める取り組みでは後手に回った。自民党としては情報量を増やす必要があろう。

 安倍晋三首相は20日にテレビ出演して説明を始めたが、先に6日から同党ネット動画配信で説明を開始。その中ではテレビが呼んでくれないとこぼしてもいる。同紙7月21日号は「安倍総理 平和安全法制の必要性訴える」のタイトルで、その時の首相動画出演を報じた。

 小見出しは「集団的自衛権の行使『無制限ではない』」「平和安全法制はいざというときの備え」「日米同盟を強化し地域の安定図る」「自衛隊のリスクを下げる努力を続ける」「憲法学者と政治家の役割・責任は違う」。首相は「かつてのベトナム戦争やイラク戦争、湾岸戦争のような戦闘に自衛隊を送り出すことは絶対にない」と訴えている。

 同紙7月14日号は6月22日の通常国会会期95日間延長を受け、「平和安全法制の早期成立を」の見出しで佐藤正久党国防部会長が国会審議の論点に答えている。小見出しは「限定的な集団的自衛権行使は憲法違反に当たらない」「ホルムズ海峡の機雷掃海は可能」「自衛隊のリスクを論じるのは極めてナンセンス」「徴兵制の導入はあり得ない」「『木を見て森を見ない』野党」。

 イラク派遣の経験がある自衛官出身の佐藤氏はリスク論議について、「自衛隊の行う任務にリスクを伴わないものはありません……自衛隊は何の任務をどこでどのようにやるかによって、リスクの議論は変わってくるので、一概に今回の法案をもってリスクが上がるとか下がるとかを論じることは極めてナンセンス」と述べている。

 さらに「それよりも重要なことは、政治が従来の法律の非現実的な部分を見直し、自衛隊のリスクを極小化すること」と強調し、「非戦闘地域」として派遣された「サマワでも、オランダ兵が手榴弾で殺害されたり、自動車爆弾テロが起きるような状況」だったと指摘。法案で「現に戦闘行為が行われている現場」とそれ以外に区分したことは「現実的で明確な区分ですから、自衛隊のリスクを下げることができます」などと訴えている。

 7月28日号は「平和安全法制衆院通過 国民の命と平和な暮らしを守る」の記事で谷垣禎一幹事長の発言、安倍首相の動画出演、地方議会での賛成意見書などだ。各世論調査の厳しい数字を挽回するのは容易ではないが、その意思は党機関紙に示したと言えよう。

解説室長 窪田 伸雄