参院は良識ある安保審議を
猛スピードの中国軍拡
嘆かわしい衆院野党の行動
先日、国会の予算委員会でプラカードを持った人たちの写真を見て一瞬、「これは大変だ」と思った。日本国の「国権の最高機関で、国の唯一の立法機関」にデモ隊が入り込み占拠されていると思い、注意深く新聞に目を近づけて読むと、何か顔なじみの国会議員が芝居がかった泣き面をしていたり、怒っているような顔をして写っていた。デモ隊の乱入でないことで少しは安堵(あんど)したものの、国会議員の品位のなさにはがっかりした。
日本の英字新聞だったが、記事の内容は野党議員の振る舞いよりも与党の強行採決を批判するようなものであった。国家の安全保障と相撲は次元の違うものであることは承知しているが、外国生まれの大関や横綱には日本の品位を求めながら、それを国会議員に求めない日本のメディアにも疑問を感じた。
民主主義は御都合主義ではなく、高度な理念に基づく政治制度で、ルールを尊重するものであったはずではないだろうか。野党議員は今回の安全保障関係の法案を本当に自分の信念に基づいて阻止したいのであれば、まずはもっと真摯(しんし)に議論し、建設的な代案を出すべきであり、その意志も能力もないのに採決を反対するというのは非論理的である。議論を尽くし、何か今までと違うアイディアでも提案するならともかく、いたずらに採決を先送りすることは、税金と時間の無駄遣いになるだけだ。もちろん議員は委員会の時間が長ければ長いほど手当がつくから良いのかもしれないが、それでは余りにも不正であると言わざるを得ない。
私が以上のような私見をある人に愚痴ったところ、その方は半分冗談で「委員長が、賛成の方ご起立願います、と言った時に野党の議員も一斉に立ったのですから、彼らも内心賛成して満場一致で法案を通したのでしょう。しかし、それでは日頃の言動と一致しないので、格好をつけてプラカードを立て一応反対の姿勢を守ろうと演出していただけ」とおっしゃった。
確かにそういう解釈も可能であるが、彼らにはそのような芸当をする政治的な手腕があるとは思えない。残念ながら、彼らはやみくもに反対することが目的になっていて、国益と平和について考えていない。今、日本の周りに何が起きているかを真剣に考えれば、「戦争反対」と叫んでいる人たちこそ、戦争を阻止するための法整備を妨害し、結果戦争を招くようなことをしている。
米国を始めとする、日本以外の多くの民主国家の場合、外交と防衛に関しては各政党間の政策に基本的には大きな違いがない。つまり各論で手法や規模で違いがあっても、総論、つまり国益の基本に関わる問題では常に共通認識を持ち合わせている。日本を取り巻く国際情勢が緊迫している状況認識を持たない政治家や言論人は、どこか国家や国益と言う価値観を持たない人種になってしまっている。
中国がフィリピン領域の南沙諸島で、岩礁や暗礁の上に人工島を強引に建設し、港や滑走路を作り、そこを軍事基地化している現実や、1980年から軍事予算を40倍にも増強している事実を、野党の議員たち、日本の世論のリーダーたちはどのように考えているのであろうか。既に空母も入手し、新しい戦闘機、潜水艦の開発を猛スピードで強行し、東シナ海、南シナ海を中心に、蛸(たこ)の手のように伸びて来ている中国の挑発的行動に危機感を抱かないのは、国際平和への無関心なのか、あるいは敵が直接日本の領土を襲ってくるまで高見の見物を決め込んで、アジアの危機だけではなく、日本自身の安全保障も考える必要はないと言うことなのだろうか。
一部のメディアは、今回衆議院で可決された一連の法律案を「戦争をするための法整備」と批判しているが、それは国際情勢の認識からすれば正反対である。むしろ、同盟国アメリカとの関係を強化し、集団的自衛権を法制化し、法治国家日本として法整備を行い、日本固有の領土である尖閣諸島のみならず、日本とアジアの平和構築、平和維持に直結する東シナ海、南シナ海の領域の緊張緩和に寄与するための備えであり、アジアの自由と平和を守るための精一杯の応急措置なのである。
参議院には良識の府として、日本が責任あるアジアの先進民主国家として真摯に議論し、中国共産党一党独裁の覇権主義からアジアを守るための対策として今回の安全保障関連の法案を可決し、日本及びアジア全体の平和と国際秩序を脅かしている勢力の台頭を抑止することが急務であるという認識に立って行動することを期待したいものだ。
安倍首相が急ぎ過ぎだという批判があるが、待ってくれないのは日本を取り巻く国際情勢であり、安倍首相は日本国民と日本を守り、緊迫するアジアの平和と自由を守るべく、機を逃さないよう奮闘しているのだ。政治家には運も大切だが、正しいことを誠心誠意を尽くして不動の精神で貫けば、また運も付いてくるものだ。