自民党の勝利、アベノミクス信任を強調

奇襲解散を機関紙は後追い

 自民党の機関紙「自由民主」は、衆院選結果を12月23・30日号で「アベノミクスを信任 与党で3分の2以上を獲得」の見出しで報道した。自民291議席、公明35議席で公示前勢力と同じ326議席という結果は、民主党政権の失政批判で得た前回の大量議席を、今度は野党から攻撃されながら維持する難しい選挙を制したものだ。

 今回の安倍晋三首相の解散は党側に異論があったほどの奇襲だった。選挙が近づけば機関紙に候補予定者一覧が紹介されるものだが、11月以前に「自由民主」に衆院候補予定者がでたことはない。それどころか、読売新聞の報道を皮切りに解散説がマスコミに取り上げられても「自由民主」は臨時国会における政策テーマなどを取り上げる平時の紙面だった。

 1面見出しを拾うと「最重要課題の地方創生」(11・4)、「攻める対外情報発信に 慰安婦誤報問題は国益を毀損」(11・11)、「地方創生実行統合本部 “長寿・子宝の島”奄美大島、徳之島を視察」(11・18)、「サンゴ密漁は我が国主権の侵害だ」(11・25)。中のページをめくっても解散総選挙に触れたものがない。

 これが野党になると敏感だ。共産党は機関紙「しんぶん赤旗」11月12日付で1面に「早期解散論広がる」の記事を書き、2面に「“解散政局”の背景は」「世論と運動が追い詰める」の関連記事を載せた。13日付は1面トップで「早期の解散・総選挙濃厚――安倍暴走ストップ、党躍進を 直ちに臨戦態勢を確立し全党が勇躍して大奮闘しよう」の見出しで、「緊急の全国都道府県委員長会議」での志位和夫委員長報告を扱った。

 月2回の民主党機関紙「プレス民主」も、11月21日号1面で11月11~13日の各会合における海江田万里代表、枝野幸男幹事長、川端達夫国会対策委員長、福山哲郎政策調査会長らの「解散」についての首相批判が載る一方、同13日に選挙公約の「マニフェスト」作成を海江田代表が指示した記事を入れた。

 両野党機関紙を見ても、安倍晋三首相が解散を表明する前に浮き足立ち、選挙へ走りだしている。「自由民主」が衆院解散を取り上げたのは、11月18日に安倍首相が首相官邸で記者会見して正式に表明したのを受けた12月2日号1面においてだ。首相与党の事情もあろうが、「解散」に関して「自由民主」は後追いだった。

 首相の福島県での衆院選公示第一声を扱った同紙12月9日号の10面には11月25日の政権公約発表、全国幹事長会議、12月1日の政権公約に関する政策懇談会の記事が載る。友好団体に政権公約を説明する政策懇談会の記事では「谷垣禎一幹事長も、『“大義なき解散”と言われるが、厳しい選挙をあえて行い民意を問うのが民主主義の原点』と、師走選挙に理解を求めた」とあり、公示前の空気を伝えている。

 首相は強いリーダーシップで状況を乗り切ったと言えよう。

解説室長 窪田 伸雄