役員人事後の「プレ民」、再生懸け反転攻勢を強調

対立軸に「分厚い中間層」

 10月の民主党機関紙「プレス民主」は、9月16日の両院議員総会(開催地・岩手県盛岡市)で党幹事長はじめ主要役員人事が行われてからの紙面になる。衆参の国政選挙惨敗で大きく議席を減らしても政権交代を窺(うかが)う2大政党を自負し、同人事を「海江田第2次改造『次の内閣』」とともに掲載した(10月3日号)。

 役員人事は代表代行に岡田克也元代表、幹事長に枝野幸男元官房長官をあて党人派を採用、大畠章宏前幹事長は常任幹事会議長と党改革創生本部事務局長を務め、労組派とのバランスを図った。「全員一丸で国民生活と民主党の再生へ」の見出しの記事で、海江田万里代表は「この新しい人事を『再生加速の人事』と名付けたい」と述べている。

 海江田代表は、政権喪失後しばらく続いた反省行脚、反省総括を踏まえた党改革の方向性の模索にけりをつけ、党再生に向けた攻勢に転じたい構えだ。地味ではあるが、民主党なりに選挙敗北後の“選後”処理を行い、任期後半は来年の代表選で再び政権をめぐる選挙に挑む体制を選出する橋渡しをする考えだろう。

 同じ場で開催された国会議員研修会の記事では「臨時国会で反転攻勢へ」で、安倍政権への攻勢を打ち出している。

 同紙10月17日号では、安倍政権の経済政策であるアベノミクスに対し、格差批判を強めて「分厚い中間層」を主張する対立軸を打ち出している。「党新役員に聞く」で枝野幹事長は、「強いものをより強くして、そこから社会全体を引き上げていくというのが安倍総理の考え方ですが、われわれは違います。『分厚い中間層』をしっかり維持し、下支えしていくことで社会全体を良くしていくことが私たちの考えです」と述べた。

 これは株価が高くなった恩恵が一般消費者に行き渡っていない間隙(かんげき)を突くものだ。しばらく惨敗ショックが続いた民主党に主張するものができてきた印象だ。

 与野党の状況も変化している。ひとつは日本維新の会とみんなの党の分裂だ。2012年12月の衆院選当時は民主党の地位を脅かす勢いだったが、今では維新の党、みんなの党とも低迷する民主党の支持率にも及ばない。

 その維新、みんな両党の党首との会談を同号のインタビュー(聞き手は林久美子党広報委員長)で海江田代表は、「まず、国会の中で協力できることは協力していこうということで、ひとつの動きが出てきた」と評価した。首相が「責任野党」と呼んだ、みんなと維新が今国会から民主との野党協力にシフトし、第2次安倍改造内閣の2閣僚が辞任に追い込まれたのもこれと無関係ではないだろう。

 同代表は新人事に関して「もう後がない」との心境を吐露するが、危機感を有する勢力は少数でも意外な力を発揮することがある。統一地方選向けの記事は見出しに「再生に向け始動」ととり、地方選から再起を図ろうとしている。

解説室長 窪田 伸雄