自民の「女性」運動、掛け声先行し政争の具に
標的にされる女性政治家
松島みどり前法相が公約を印刷したウチワで追及され、政治資金収支で「私の知らないことが多すぎる」小渕優子前経産相も責任を問われて辞任したばかりだが、自民党の機関紙「自由民主」10月28日号1面は「『女性活躍』の推進に向け国民運動を展開」という見出しのインタビュー記事だ。語っているのは「上川陽子党女性活躍推進本部長」、21日に就任した上川法相である。
安倍政権が最重要課題に「女性活躍」を据えたことに、リードでは「この取り組みを具体的に推進するための組織として、党内に総裁直属機関の『党女性活躍推進本部』が設置された」と紹介している。上川氏を本部長に抜擢して運動を進めようとした矢先に女性閣僚2人が辞任する騒動に巻き込まれたわけだ(同号に閣僚交代はまだ載っていない)。
党女性活躍推進本部長の内閣のカウンターパートは「すべての女性が輝く社会づくり本部」本部長の安倍晋三首相だ。それだけ重みのあるポストで、「自由民主」の紙面にも意気込みが表れている。が、「女性が輝く」9月の内閣改造から早くも女性5閣僚のうち2人が辞任した事態とあわせて見ると、掛け声先行の印象は否めない。
また、安倍首相の音頭取りだけに、女性の活躍に異議はなくても、女性政治家が政争の標的にされる傾向も見えてきた。与野党対立、支持率、票に絡むと違った話になるのだ。民主党が政権を獲った時は小沢ガールズ(自民党実力者の小選挙区に当てた民主党女性候補)に野党自民党は歯ぎしりした。その後、小沢ガールズのスキャンダルが幾つか露呈した。選挙利用、政治利用が先行し内容が伴わないと「女性の活用」が仇(あだ)となる。
同じように労働力不足を想定し、指導的地位30%の女性登用という目標も数合わせの数値主義になると弊害を生むだろう。解決するべきは能力があるのに登用されない、あるいは能力を生かせない状況がある場合である。
法相就任前、党女性活躍推進本部長として上川氏は同紙で、「『女性の活躍』に関する国全体の意識を高める国民運動をリードしていく」と同本部の取り組みを紹介し、①男性中心の長時間労働の職場を見直す②東京五輪に向けた女性アスリート育成支援と女性の起業支援③地域で子育て・介護をする女性の支援④外交・国際貢献における女性支援―について抱負を語っている。
月1回の「女性活躍」全国キャラバンなどの運動を行いながら、「来年の党大会に向けて中間提言、さらに統一地方選に向けて中長期的観点から本部独自の政策集をとりまとめ、内外に積極的にアピールしていく予定」が、どのように受け継がれるか。
女性活躍推進法案は成立するだろうが、数や比率の画一的な目標だけでなく、能力を生かすなど、内容が伴う看板政策を打ち出さなければ自民党にとってイメージ・チェンジにならないだろう。
解説室長 窪田 伸雄