「女性活躍」戸惑う社民、政策「そっくり」でも反対
戦時見立てる時代錯誤
社民党の機関誌「月刊社会民主」8月号でジャーナリスト・和光大学教授の竹信三恵子氏は、安倍政権の女性政策に「文言はどれも、これまで男女平等を求めるグループが掲げてきたものとそっくりだ」と戸惑う。だからであろう、「アベノミクスが目指す女性の徹底利用」と題して批判をした。
第2次安倍改造内閣での最多の女性登用と「女性活躍」のスローガンは、6月に決定した「骨太の方針」にある「女性が輝く社会を目指し、男女の働き方に関する制度・慣行や、ワーク・ライフ・バランスを抜本的に変革。男女の意欲や能力に応じた労働参加と出産・育児・介護の双方を実現」との内容を受けたものだ。
この「女性が輝く社会」に同記事は、「中身を点検すると、そこには『戦争ができる国』へ向けた『総力戦』路線の中での女性の徹底利用の横顔が見えてくる」と被害感を煽(あお9る。が、鳩山内閣で福島瑞穂少子化対策・男女共同参画担当相(当時同党首)は「仕事と家庭のワーク・ライフ・バランス」「保育園、学童クラブのインフラ整備」など同様な政策を訴えた(2009年9月16日就任会見)。
ご都合主義と言えるが、この会見で福島大臣が他に言ったことに「平和の実現」がある。社民党(旧社会党)には自らは“平和勢力”、日米安保条約を改定(60年安保)した自民党は“戦争勢力”とする「反戦平和」の物差しがある。ステレオタイプだが、同記事もそのような基調だ。
竹信氏も「公明」10月号の金谷千慧子氏と同様に国際通貨基金(IMF)など国際指標に照らして、「日本の女性の活躍度の低さ」や「男女の賃金の格差」の大きさを指摘し、欧州の男女平等政策を支持している。
しかし、被害感覚が強く、育児・介護など家事をする女性の賃金が安い問題には「家事労働ハラスメント」と表現。さらに、安倍政権の下では、低賃金労働の女性が増えて貧困化が進むと批判した。
引き合いに出すのは、同党などが「残業代ゼロ」と批判する成果主義の「新しい労働時間制度」だ。「保育園に子どもを迎えに行く時間が来ても、『成果』を達成するまでは会社を出ることはできなくなりかねない」と言うが、年収1000万円以上で高度な専門職などに適用が検討されている同制度と、同記事が問題視するパート・派遣・非正規が主流となる女性の雇用状況とは噛(か)み合わない。
保育園・学童の保護士が低賃金のため不足し、「保育支援員」で「穴埋め」することを批判するが、求人条件から外されやすい50歳代以上の育児経験あるベテラン世代の雇用機会になる面もある。物事は漸次的に進むのではないか。
結論部では、「いまの『女性が輝く』政策は、……戦争ができる国づくりの余資を生み出そうとするものだ。このような動きは、第2次大戦中の『銃後の妻』『国防婦人会』の再来に容易に転化しかねない」とまで批判を引っ張った。安倍政権を相手に「軍国主義復活」と叫びたいのだろうが時代錯誤だろう。
解説室長 窪田 伸雄