労働改革を阻む「プレ民」、第3の矢・成長戦略と対決

労組と連携強化し挽回図る

 「経済最優先」の第2次安倍改造内閣と臨時国会での論戦を控えて、民主党の機関紙「プレス民主」9月19日号は労働改革に矛先を向けた。これは自民党執行部人事と内閣改造人事を報じた自民党機関紙「自由民主」9月16日号が、「労働市場全体を俯瞰した改革ビジョンを」の見出しで識者の連載「アベノミクス・新成長戦略 第1回成長戦略の残された課題―労働市場の改革―」(日本総研研究所理事・高橋進氏)を始めたのと対照的だ。

 政府・与党が成長戦略の一環として進める労働改革に対して、「プレス民主」は4面で「労働法制の改悪を断固阻止するために戦う」と題し、民主党ネクスト厚生労働大臣・山井和則衆院議員のインタビューを載せた。「改悪」と批判しているのは、労働者派遣法改正案、解雇の金銭解決、「残業代ゼロ」法案(ホワイトカラー・イグゼンプション=成果で評価する新しい労働時間制度)などだ。

 山井氏は、塩崎恭久厚労相について「国民生活を脅かす大臣」だと対決姿勢を示し、労働改革に反対を唱えている。派遣法改正案については「企業は正社員をリストラして派遣労働者に切り替えやすくなります」、解雇の金銭解決については「不当解雇をしやすくする」、ホワイトカラー・イグゼンプションについては「労働者がどんなに長時間労働をして仮に過労死に追い込まれたとしても、企業は責任を負う必要がなくなりかねません」などと批判した。

 労働改革は人口減少による日本経済の生産性低下に対処するため、労働の効率化を促して生産性の向上を図る成長戦略だ。民主党に限らず労組の支援を受ける共産、社民などの野党も労働改革には強く反対しているが、マイナス面の強調や企業性悪説的な議論が多い。が、このような批判を受けて、内閣改造後の経済財政諮問会議や厚生労働省労働政策審議会の審議では、労働改革の弊害を防止する対策も検討されよう。

 同紙5面には同党企業団体対策委員会の「第1回政策説明会」の記事が載り、「産別の皆さんとは従来こうした機会はあったが、多くの方に集まっていただきたいという趣旨で単組(単位労働組合)の方々にもお声がけした」と柳田稔同委員会委員長があいさつしている。党と労組との連携を単組レベルまで深める企業団体対策のてこ入れをしたわけだ。

 通常国会の争点だった集団的自衛権など安保問題と違い、経済政策や労働改革の行方は労組の直接の関心事だ。労組との関係を強化するためにも労働者派遣法改正案などへの反対運動に本腰を入れるだろう。

 何しろ今年の春闘の最大功労者は安倍晋三首相だった。民主党の政権担当時代は不況で賃上げを言うこともできなかったが、安倍首相の音頭で主要企業は労組の要求に応じて久しぶりのベースアップが実現した。民主党は面目丸潰れである。アベノミクス批判に力を入れ、労組の関心を引く労働改革への反対を通じて挽回を図る構えだ。

解説室長 窪田 伸雄