自民の地方選決起、慎重要す消費税10%増税
政権奪還「総決算」は関門
自民党の機関紙「自由民主」8月19・26日号は、「来春に行われる統一地方選の必勝に向け、わが党はいち早く動き出した」(1面リード)と、1~3面で5日に行われた党本部・都道府県支部連合会合同会議の記事を載せた。
安倍晋三首相は「総裁挨拶(あいさつ)」で、「総選挙と参院選に続いて、統一地方選に勝って初めて日本を取り戻す戦いが完成する。皆さんと共に、まなじりを決して戦い抜く」(同紙要旨)と、決意表明している。
国政選挙まで間があり、統一地方選は事実上、政権の信任を問う選挙となる。後に控える集団的自衛権一部容認の閣議決定を受けた法整備、消費税10%増税など国政課題にも影響し、再来年夏の参院選や同年末までに予定される衆院選など、首相の政権戦略をも左右しよう。記事でも「特に来年の統一地方選は、その後の総選挙や参院選の行方にとっても重要な意味を持つ」と、政権奪還の「総決算」との位置付けだ。
また、野党側のアベノミクス批判、集団的自衛権批判を見越して、これら「関心の高い政策課題に対する発信力の強化」のため石破茂幹事長による安全保障、高市早苗政調会長による経済の政策説明会を行ったという。
安保問題について石破氏の説明には説得力があるが、要は「戦争する国」など野党のレッテル攻撃に宣伝量で対抗できるかの問題だろう。この点、「各県連からの主な要望・意見」の記事で「党本部から弁士を派遣してもらい、街頭演説などで、県民に説明してもらいたい」と、安保問題に携わらない地方政治家の苦手意識が垣間見られる。
一方、不安視されるのが経済だ。安倍首相も高市氏も「有効求人倍率は上昇し続け、22年ぶりの高水準だ。賃上げ率も15年ぶりに2%台にのった……」(同紙・総裁挨拶要旨)などアベノミクスの経済効果を力説するなど、成功したという自負心が強い。このためか、安倍内閣の経済閣僚らは予定通りの消費税率10%引き上げを主張し始めている。
記事中、高市氏の「実質GDP(国内総生産)が6四半期連続して成長している」との発言が載るが、同会議後の13日発表の4~6月期ではマイナス6・8%と大きく減らした。
消費税増税による落ち込みだが、既に日銀の今年度成長率見通しは下方修正を繰り返しており、アベノミクス第三の矢の成長戦略は予断を許さない。安全保障の「前のめり」批判は実際は遅すぎる対応であり、的を射ていないが、景気回復を見届けないままの増税への前のめりは考えものだ。
原発停止で電気料金高の上、交通費、ガソリン、その他小売商品の値上がりの負担が8%消費税率で現実となった今、10%への追い打ちは有権者に重い話と受けとめられ、経済活動を萎縮しかねない。政権が変わらない地方選だけに批判票を投じやすい可能性もある。「日本の隅々まで経済を繁栄」(高市氏)させるなら、それまで慎重を期した増税判断をすべきである。
解説室長 窪田 伸雄