「党改革」で護憲的政党に、民主の穏健中道路線
党員票強まる代表選見直し
通常国会末に“海江田降ろし”に揺れた民主党だが、7月31日の両院議員懇談会で難なく海江田万里代表が続投を宣言した。参院選敗北の責任をとる出処進退に1年の猶予期間を設けて党勢回復を期したものの海江田代表に目立った実績はない。
しかし、衆参の国政選挙惨敗の結果、海江田執行部に不満を抱く保守系議員は少数になった。政権当時308人いた衆院議員は今や55人、参院議員は非改選組のおかげで58人と参院議員が多い。参院民主党のドンは日教組出身の輿石東元幹事長(副議長のため党籍は離脱)だ。労組出身者の大畠章宏衆院議員も幹事長辞任の噂(うわさ)どころか全くの安泰で、誰も敗北の責任を取らない盤石の労組体質を印象づけた。一言で言えば「ずるい」と表現されよう。
しかも、その「ずるさ」には磨きが掛かっている。同党機関紙「プレス民主」は8月15日号1面で「私は、先頭に立ち突き進む 民主党代表 海江田万里」の記事を掲載したが、ここで代表選のルールを変えることに着手すると表明している。
これは同党改革創成会議(議長・船橋洋一日本再建イニシアティブ理事長)の報告書を受けたものだ。同紙8月1日号1面に船橋氏の「民主党への提言」が載るが、党改革の指針になる報告書の概要を語っている。「民主党のカラーは穏健中道と言い切ろう」「地域を重視する」「女性の登用」などを強調し、15日号2~4面には「民主党改革創成会議報告書」全文が詳報された。
この報告書について、同号1面で海江田氏が「代表選挙の在り方については、これはすぐに検討に入り、見直しに着手しています」と述べている。来年の代表選で実施する構えだろう。報告書によれば「国会議員・国政公認候補予定者のポイントと、地方議員・党員・サポーターの保有ポイント数を同比率で配分する」ように見直すものだ(これまでは国会議員ポイントの比率が大きい)。
こうなると党員・サポーターにおける連合系労組、各NGO・NPO団体などの市民運動など組織票の影響が強くなる。ちなみに、民主党内の「保革対決」となった菅直人代表(当時首相、元社民連)と小沢一郎元代表(元自民党)による2010年代表選では、菅首相の消費税失言が尾を引いた参院選敗北直後にもかかわらず、党員票ポイントは249対51で菅氏が小沢氏を圧倒した(国会議員票ポイントは206対200で拮抗)。代表選制度が報告書通りに見直されれば、今まで以上に組織票を持つ左派が党内権力基盤を強めよう。
また、報告書は「いま、野党再編・再結集にうつつを抜かすヒマはない」と述べ、「日本における穏健中道の政策理念は、憲法の枠内での自衛力と日米同盟に裏付けられた対話と抑止により平和を構築し、安全保障を維持する基本姿勢を明確にすることである」と「憲法の枠内」を強調する。これまで民主党で議論された憲法改正論は後退して「穏健中道」の9条護憲的な政党になり、野党再編は当面ないだろう。
解説室長 窪田 伸雄