「軍国主義」とレッテル貼り、「赤旗」の反戦煽動

集団的自衛権の閣議決定に

 集団的自衛権の行使を一部容認する安倍内閣の閣議決定を受けて、日本共産党機関紙「しんぶん赤旗」(7・2)は、1面で「『海外で戦争する国』への歴史的暴挙」の見出しで志位和夫委員長の「憲法を破壊し、『海外で戦争する国』をめざす歴史的暴挙――集団的自衛権行使容認の『閣議決定』の撤回を求める」との声明を報じた。

 また、同面カタに「官邸前など緊急行動」と写真入りで反対する人々を扱い、最終面(16面)にも同行動の写真特集をしている。同紙にはテレビ欄が最終面にあるが、それを引っ込めての特別仕立てだ。「官邸へ終日」の見出しで「午前7時半ごろから集まった参加者は、時間がたつにつれて続々と増え続け、夕方には長い列ができ、身動きができない状況に。1日を通して6万人の熱いコールは夜遅くまで響き渡りました」と報じた。

 しかし、「歴史的暴挙」と言っても翌2日の国会、官邸周辺は平穏だった。「6万人」という人数についてもデモを好意的に扱った朝日新聞7月2日付でさえ「1万人規模」である。

 また、同紙が「海外で戦争する国」と訴え、写真のデモ参加者が「この子たちを戦争に行かせない」「戦争する国反対」と書かれた紙を掲げても、宣戦布告の閣議決定ではない。それを国民一般は分かり切っているからデモも一夜のイベントである。

 それでも共産党は「戦争」を煽(あお)る。志位委員長の声明でも、「アフガニスタン報復戦争やイラク侵略戦争のような戦争を米国が引き起こした際に、従来の海外派兵法に明記されていた『武力行使をしてはならない』、『戦闘地域に行ってはならない』という歯止めを外し、自衛隊を戦地に派兵するということである。……こうした無制限な海外での武力行使を、『自衛の措置』の名で推し進めることは、かつての日本軍国主義の侵略戦争が『自存自衛』の名で進められたことを想起させる……」と、話を飛躍させていく。

 結論は「安倍政権の軍国主義復活の野望を打ち砕く」というのだが、目下の中国共産党が国際宣伝しているのと同類の反日フレーズだ。しかし、集団的自衛権をめぐる閣議決定は極めて限定的で、国連憲章が認めた独立国に当然あるべき自衛権の「復活」にもならない。これをもって「軍国主義復活」とする共産党は日中問わずデマゴーグである。

 それを百も承知の悪宣伝であろう。悪いイメージの言葉は無関心層にも印象が残る。このため、戦後の安保論議は不毛なものになった。反戦煽動(せんどう)は選挙や党勢拡大の戦術であり、今回も政争の具と化している。

 一方、安倍首相が国会審議や記者会見で指摘した南シナ海でベトナムやフィリピンが、東シナ海、尖閣諸島で我が国が直面している中国の覇権主義の現実について、志位委員長声明には見当たらない。日本共産党は、「軍国主義」「海外で戦争」のレッテル貼りで問題の本質を逸らしており、こちらの方が重大問題であろう。

解説室長 窪田 伸雄