嘉田知事後継に三日月氏、「プレ民」の滋賀県知事選
琵琶湖“保守”の県政継承
滋賀県知事選挙(13日投開票)は嘉田由紀子知事の後継として民主党から衆院議員を辞職して無所属立候補した三日月大造氏が、自民、公明推薦の元経済産業官僚の小鑓隆史氏を接戦で制し、共産党推薦の坪田五久男氏も破った。
首長選は現職側が有利だが、2012年衆院選で自民党は滋賀県全選挙区を制覇、13年参院選でも民主党現職を倍近い大差で破った勢いから県政奪還の好機としていた。
それだけに、与党推薦候補の敗因を集団的自衛権行使容認の閣議決定などに結びつける見方が多い。が、この点で最も辛辣(しんらつ)に安倍政権批判をしている共産党の推薦候補は同参院選(候補者は同じ坪田氏)の得票から3万余り減らした(投票率は13年参院選52・96%、今回知事選50・15%)。集団的自衛権が小鑓氏敗北の主因なら、坪田氏の票の落ち方はないだろう。
投票前に民主党の機関紙「プレス民主」に載った滋賀県知事選挙関係記事(6月20日号、7月4日号)の強調点は、嘉田「草の根自治」県政の継承、琵琶湖を守る――で、「集団的自衛権」は触れていない。これは当選を報じた7月18日号も変わらない。三日月氏は嘉田知事直系候補として二人三脚で動き、さらにもう一人の知事経験者・武村正義元内閣官房長官が加勢している(7月4日号1面「民主党への提言」)。
地方選には地方の関心があるが、日本最大の湖、淡水資源の宝庫である琵琶湖を囲むドーナツ状県土の滋賀の場合、琵琶湖の環境問題は特別な焦点であろう。嘉田氏の意外な06年知事選当選もそうだった。
嘉田氏は琵琶湖研究所主任研究員、琵琶湖博物館総括学芸員を経て京都精華大学教授を務めた「琵琶湖」と「水」の専門家であり論客だ。京都で「世界水フォーラム」が開催された03年に本紙インタビュー(聞き手・池田年男記者、03年12月26日付)にも登場したが、06年7月知事選への出馬には少々驚かされた。
当時、郵政解散で大勝した小泉純一郎首相の政権に最大級の追い風が続いており、自公与党に加え民主党も推薦した現職・国松善次知事に挑んだ嘉田氏には社民党が支持しただけだった。相乗り批判や郵政問題の保守分裂があったとはいえ、国政の物差しが通用しない地方選だった。
マスコミでは新幹線開発の凍結が注目されたが、自然環境や生態系を中心に据えれば、環境保全という琵琶湖“保守”の理屈も成り立つ。
今回、比例復活当選の三日月氏は衆院議員辞職でかつて旧同盟(連合に合流)系労組から政界に転じた川端達夫党副代表に繰り上げ当選を献上し、連合の支援を確実にしたほか、追い風のない民主党を離れて無所属となり、自身の選挙基盤に加え2人の知事経験者のバックアップを受ける地元力で競り勝ったのだ。
自民党機関紙「自由民主」7月8日号は1面で同知事選を「『絶対に負けられない戦い』と位置付け」たが、「アベノミクス」のマクロ的な訴えを地域版に洗練させ地方に密着できるか、福島、沖縄の知事選など今年の地方選の坂を登る上で課題を残したと言えよう。
解説室長 窪田 伸雄