米同性婚賛成派への反論ヘリテージ財団研究員 ライアン・アンダーソン氏に聞く

 米国で同性婚を支持する世論が急速に拡大している。「結婚の平等」を訴える同性婚賛成派の主張を、反対派は押し返すことができるのか。伝統的な結婚の定義がなぜ重要かを論理的に説明した書籍として注目を集める『結婚とは何か』の著者の一人で、米大手保守系シンクタンク、ヘリテージ財団研究員のライアン・アンダーソン氏に聞いた。
(聞き手=ワシントン・早川俊行)

結婚の防衛は公共の利益

憲法の平等原則に反せず

400 ――同性婚賛成派は米憲法が保障する法の下の平等を根拠に同性婚の正当性を主張しているが、どう反論するか。

 憲法にある平等原則とは、同じものを同じように扱えという意味だ。だが、同性愛関係と結婚は同じではない。同性愛関係から子供は生まれない。子供に父親と母親をもたらすこともできない。結婚とは男女を夫婦として父母として独占的、恒久的に結びつけることだ。

 同性愛関係には、結婚が果たすそのような社会的機能はない。同性愛関係が善か悪かを言っているのではなく、結婚とは異なるものなのだ。従って、法律が同性愛関係と結婚を異なるように扱っても平等原則には反しない。

 賛成派が結婚の平等が認められた例として挙げるのが異人種間結婚だ。だが、結婚とは男女という人間の二つの要素を結び付けることであり、肌の色とは関係がない。結婚に関する法律は人種と無関係であるべきだが、ジェンダーフリーにはなり得ない。

 これは差別ではない。婚姻を他の関係と区別しているだけであり、すべての人を平等に扱っている。

 ――現代社会では法律論や権利をめぐる議論が優先され、道徳的、宗教的視点はあまり顧みられない。こうした状況の中で、同性婚賛成派の主張を押し返すことは可能なのか。

 われわれが『結婚とは何か』という本を出したのはまさにそのためだ。この本は、結婚を宗教的な制度や神聖な存在としてではなく、市民制度として見た上で、結婚とは何か、結婚に関する法律はどうあるべきかを問うものだ。

 そもそもなぜ行政は結婚に関与するのか。われわれの恋愛生活に関心があるのではなく、男女の恋愛関係や性行為によって子供が生まれるためだ。子供がきちんと育てられ、法を守る生産的な社会の一員になるようにすることは行政にとって利益だ。

 次世代の市民を生み育てるために家族という市民社会制度を尊重することにより、行政はその役割を制限できる。もし結婚が破綻すれば、行政は福祉を拡充しなければならず、役割は拡大する。また、犯罪は増加し、子供の貧困は増え、社会の活力も低下する。

 同性婚賛成派が主張するように、結婚が単なる大人の同意に基づく恋愛生活であるならば、結婚は枠組みが無くなってしまう。最高裁で先月行われた同性婚をめぐる訴訟の口頭弁論で、ソニア・ソトマイヨール判事が疑問を呈したように、結婚する権利が愛情で決まるなら、なぜ結婚を2人に限定するのか。2人以上が愛し合うことは可能だ。一夫多妻などあらゆる形態を結婚として認めなければならなくなる。

 ――世論調査では同性婚に対する支持が急速に拡大している。この流れを反転させることはできるか。

 世論の変化はメディアで報じられているほど大きくはない。昨年5月にノースカロライナ州で行われた同性婚を禁止する州憲法修正案の住民投票では、メディアが行った直前の世論調査で賛成と反対が拮抗していたが、結果は61%対39%の大差で承認された。世論調査が示す同性婚支持は過大だ。

 それでも、支持が広がっていることは否定できない。その責任はわれわれにもある。賛成派に比べて、継続的に説得力のある主張をしてこなかったからだ。多くの米国人はわれわれの意見を聞いた上でそれを否定しているのではない。まだ耳にしていないのだ。

 従って、説得力のある説明をすれば、人々は考え方を変える。最近、いくつかの大学で話をする機会があったが、多くの人から「聖書や宗教的観点ではなく、公共政策の視点から、結婚がなぜ重要であるか、合理的な説明を聞いたのは初めてだ」と言われた。

 同性婚賛成派は「結婚の平等」を主張するが、決して「結婚とは何か」については語らない。われわれが「結婚とは何か」をきちんと説明すれば、多くの人は納得してくれるだろう。