乗っ取られた香港の民主化運動
中華圏に浸透する同性婚(5)
香港NPO「明光社」の傳丹梅副総幹事に聞く(下)
香港民主派団体の民間人権陣線は毎年7月1日に主催して行う民主化デモでは、同性愛差別撤廃を求める法案制定を掲げてデモを行っている。同性愛者組織「彩虹行動」が入り、14年のデモでも巨大なレインボー旗を広げて先頭で行進し、今年もデモの先頭に「性差別撤廃条例を立法化せよ」と掲げ、中国の一党独裁や一国二制度堅持を求める民主化と表裏一体と混同されている。なぜ、こんな動きになるのか。
民主化デモを主催している民間人権陣線のスタッフのうち約9割が同性愛者だ。実態は民主化運動が同性愛者のグループに“ハイジャック”されている状態になっている。民主化支援のために民間人権陣線へ投じた一般市民の募金は、大半が女性の同性愛グループの活動資金源になっている。彼らは中国の一党独裁に反対する立場で民主主義を求める民主派とつながって性解放運動をリンクさせるために先頭に立ってデモに参加している。
民主派デモの主催団体と同性愛者の権利拡大を目指すLGBT(性的少数者)の団体は表裏一体となり、民主化要求を隠れみのに活動資金を得ているということか。
問題は民主派団体に入った募金がLGBT団体に流用されても、明示される義務を負わず、使途不明のままであることだ。香港では、同性愛団体が機会あるたびに権利拡大を要求する活動を展開しているが、最新世論調査を見ても明らかなように、民主化を支持する大半の香港人が民主化と一緒に同性愛者の権利拡大を求めているわけではない。
LGBT団体は同性婚や同性愛者の権利拡大に関する法案が成立することを常に要求しているが、台湾、香港、中国の両岸三地で法案成立に現実味があるのはどこか。
台湾、香港、中国の順だ。なぜなら、台湾は中国が認めないことに賛成するからだ。中国は一党独裁で政府当局がどのような立場かを明確にすれば、一般国民は強く反対することはない。香港は一般市民の根強い反対の声があるので法案阻止が長期間続くだろう。同性婚や同性愛者の権利拡大を認める法案が成立しやすいのは台湾だ。
台湾では蔡英文総統が総統選前から同性婚や同性愛者の権利に対しては支持する発言をしている。民進党政権が法案を通す可能性があるのではないか。
その通りだ。台湾では、おそらく数年以内で法案が提出され、通過するだろう。そうなると、アジア初の同性婚を認める地域となる。馬英九氏は総統在任時、同性愛に関しては寛容で同性婚については保守的な立場だったが、蔡英文氏は総統選の期間である15年10月30日、自身のフェイスブックで「同性婚を異性婚と平等に扱う」と明確に表明している。たとえキリスト団体が大規模な反対運動を展開しても、選挙公約なので通過させるだろう。
台湾の動きは中国や香港にも飛び火するか。
台湾は短期間に同性婚問題について変化する可能性がある。中国は同性婚や同性愛の権利拡大が西欧の思想だとの反発があり、伝統的な観点から短期間には変わらない。明光社は中国本土の人々にもネット上で啓蒙しようとしているが、スタッフが18人しかいないので、なかなか手が回らない。香港は台湾の動きには敏感なので影響はあるだろうが、現状では立法会で同性婚の法案は通過できない。今後は9月4日投開票の立法会選挙で親中派と民主派の議席配分がどうなるかで決まっていくだろう。
(聞き手・深川耕治、写真も)