同性愛家庭の子供、情緒・発達障害が2倍

米カトリック大 サリンズ教授が比較研究

科学的客観性無視した米学会

 今年発表された米国の研究結果で、同性カップルに育てられる子供は男女の親に育てられる子供に比べ、情緒・発達面で問題を抱える割合が大幅に高いことが分かった。研究を行ったアメリカ・カトリック大学のポール・サリンズ教授は世界日報のインタビューに応じ、同性婚は「子供にとって有益ではない」と主張。米心理学会(APA)など有力学術組織が同性愛家庭と一般家庭の子供に差異はないと結論付け、同性婚の合法化を支持したことについて「科学的客観性よりも政治やイデオロギー」を優先したと批判した。(ワシントン・早川俊行)

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 ポール・サリンズ氏 1953年生まれ。アメリカ・カトリック大学で修士・博士号を取得。現在、同大学教授、保守派団体「家庭調査協議会」上級研究員などを務める。宗教・文化・家庭に関する論文・報告書をこれまでに100本以上執筆。

 6月の米連邦最高裁判決で同性婚が全米50州で合法化されたが、子供に与える影響は同性婚論争の焦点の一つだった。米心理学会は「子供の順応、発達、心理的健康は親の性的指向と無関係であることは調査で示されている」、米社会学会(ASA)は「同性愛者の親に育てられる子供は男女の親に育てられる子供と同じように成長することは、明確かつ一貫した社会科学のコンセンサスだ」とする意見陳述書をそれぞれ最高裁に提出。両学会は、同性愛家庭でも子供は健全に育つとする同性婚賛成派の主張に学術的な“お墨付き”を与えていた。

 だが、サリンズ教授によると、同性愛家庭の子供を対象としたこれまでの調査は平均サンプル数が39人と極めて少なく、他の子供と差異は見られないとする結論は「統計学的に信憑性(しんぴょうせい)が薄い」という。

 子供がいる米世帯に占める同性愛家庭の割合は0・5%とされ、無作為に多くのサンプルを集めるのが困難なことが、信頼度の高い調査結果を得る障害となっていた。

 これに対し、サリンズ教授は、米疾病対策センター(CDC)が実施している「全米健康聞き取り調査(NHIS)」に着目。毎年3万5000~4万世帯に聞き取りをするNHISは、公衆衛生分野の調査としては世界最大規模を誇る。

 サリンズ教授は1997~2013年のNHISデータから、同性カップルに育てられる4~17歳の子供512人を男女の親に育てられる子供と比較した。その結果、身体面や学力では差異は見られなかったが、情緒・発達面では問題を抱える割合が2倍前後高いことが明らかになった。

 例えば、情緒障害を抱える割合は、同性カップルの子供が17・4%であるのに対し、男女の親の子供は半分以下の7・4%だった。また、注意欠陥・多動性障害(ADHD)や学習障害、知的障害など発達障害を抱える割合は19・3%対10・2%、情緒障害で治療を受けた割合は17・8%対10・4%、情緒障害で薬を処方された割合は21%対6・9%と、それぞれ同性カップルの子供が男女の親の子供を大幅に上回った。

子供に害をもたらす同性婚

伝統的家庭と「根本的な相違」

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 さらに、その要因を調べたところ、親との「血のつながり」の有無が情緒・発達面で差異をもたらす大きな要素であることが分かった。同性愛家庭では全ての子供が実の父親か母親、またはその両方から引き離される事実を踏まえ、サリンズ教授は同性婚の弊害をこう指摘した。

 「結婚は血のつながった親子を結びつけることを目的とした制度であり、これが子供にとって結婚が有益である理由の一つだ。だが、同性婚は正反対だ。同性愛家庭では実の父母と一緒に暮らしている子供は一人もいない。同性婚は子供に害をもたらすものだ」

 同性婚賛成派は、同性カップルが法的に結婚できないことが子供に悪影響や不利益をもたらしていると主張し、逆に子供の問題を同性婚を正当化する根拠の一つにしてきた。

 だが、サリンズ教授は「同性カップルの間に子供は産まれない。血のつながりの欠如が問題の原因であるなら、同性カップルは実の父母が子供に与えるのと同じレベルの利益を再現することはできない」と主張。同性カップルが法的に結婚できるようになったとしても、伝統的な家庭とは「根本的な相違」があり、「その欠点を埋めることはできない」と指摘した。

 同性愛家庭の子供はいじめや汚名、トラウマの経験が多いことが悪影響を与えているとの指摘もあるが、サリンズ教授の研究結果では、情緒・発達面で差異を生み出す要因ではないことが判明、むしろ、いじめを受けた経験は一般家庭の子供のほうが多かった。

 サリンズ教授によると、研究結果を発表した後、これに同意する意見が同性愛家庭で育った人から複数寄せられ、ある男性は「2人の素晴らしい女性に育てられたが、父親がいないことが寂しかった。立派な男性になるにはどうしたらいいか、2人の女性からは学ぶことができなかった」と述べ、同性婚に反対の考えを示したという。

 米心理学会と米社会学会が十分な科学的根拠がないまま、同性愛家庭と一般家庭の子供に差異はないと結論付け、同性婚合法化を後押ししたことについて、サリンズ教授は「残念なことに、両学会は科学的客観性よりも政治やイデオロギーに基づいて立場を決めた」と指摘。「最高裁は同性婚反対派が提示した証拠を無視し、両学会の主張を全面的に信用してしまった」と批判した。