「道徳教材」調査、教育関係者の意識改革徹底を


 小中学校での道徳教育に関わる教育委員会、学校の管理職、道徳教育推進教師らは、教育内容を一層充実させるよう意識改革を徹底するとともに、教育力を向上させるべきである。

 改善されぬ実態判明

 文部科学省は今年度から新たな道徳教材として「私たちの道徳」を全国の小中学生に配布したと発表した。だが、本紙がこのほど行った全国3000家庭アンケート調査によると、いまだに児童・生徒一人一人に配られず、家に持ち帰らせていない割合が80・7%にも及んでいる実態が明らかになった。これは、教育現場に文科省の意図がほとんど伝わっていないことを意味している。

 文科省は5月15日付で「学校に備え置くのではなく、児童生徒が家庭に持ち帰って家庭や地域等でも活用できるよう、対象児童生徒一人一人に確実に配布」することを求める通知を都道府県や指定都市の教委などに送ったが、それが実施されていなかったのである。

 本紙は6月にも首都圏の小中学校40校を調査し、9割近い35校で「私たちの道徳」を持ち帰らせていないことを明らかにしたが、今回の全国調査でもほとんど改善されていない実態が判明したのだ。

 もう一つ分かったことは、この教材を「子供が授業で使っていない」との回答が35・8%にも及んだことである。その「使っていない」の中には、他の教材である「心のノート」を使っているとの声も複数あった。平成14年度から使用されながら民主党政権時代には全員配布が中止された「心のノート」は、日々の生活や体験を書き込める余白を設けつつ、児童生徒が自主的に生きる力を身につけられることなどを狙いとして作成され評価された。

 それをさらに充実させた全面改訂版が「私たちの道徳」なのだ。剣道を例示しながらの礼儀やマナー、先人や現代の有名人たちの名言、日本の誇れる伝統文化、「情報モラル」など環境の変化への対応やいじめ問題などを盛り込んだ。それとともに、本人だけでなく、「家の人から」という、家庭からのメッセージを書く欄を設け、保護者が児童生徒や学校とともに勉強していけるよう工夫がいろいろと凝らしてある。

 道徳の授業自体に反対している教師は別として、指導方法がよく分からず、結果的におざなりな授業に終始している教師がこの新教材を児童生徒と一緒に読み進めるだけでも授業内容は改善しよう。

 肝要なのは、教育関係者一人ひとりが新たな教材の価値を理解できるようもっと関心を持ち、効果的な指導が行えるよう意見交換などをして連携を深めることだ。道徳教育は文科相を司令塔として関係者が総力戦で臨む覚悟と実践が必要である。

 チーム一丸で向上を

 教委の道徳担当指導主事の研修内容を充実させ学校への指導力をアップさせるとともに、学校では校長がリーダーシップを発揮し、主幹教諭や指導教員ら学校全体がチーム一丸となって道徳の教育力を向上させることを求めたい。

(7月25日付社説)