道徳教材、依然8割超持ち帰らず
徹底されない文科省通知
本紙、全国3000家庭調査
文部科学省発行の小中学生向け道徳教材「私たちの道徳」が児童・生徒一人一人に配られず、家に持ち帰らせていない学校が多くある問題で、世界日報社はこのほど、小中学生の子供がいる全国3000家庭に対してファクスでのアンケート調査を行った。その結果、依然として80・7%の児童・生徒が同教材を持ち帰っていないことや、35・8%の学校で使用されていないことが判明した。
文科省は5月15日、同教材の内容を家族や地域で一緒に考えるために持ち帰らせるよう、各都道府県や指定都市の教育委員会などを通じて各学校に2度目の通知を出した。本紙が5月末に首都圏40校を対象に緊急調査した際には、9割近い学校で同教材を持ち帰らせていないことが分かったが、その傾向が全国規模で依然、8割超という高い割合で続いていることが分かった。これは文科省の通知が教育現場で徹底されていないことの表れといえる。
調査は6月23日から学期末の7月18日まで全国の3000家庭を対象に行い、47都道府県から回答を得たうち、都道府県名・市町村名・学校名を明記した885人の回答を有効とした。その結果、「私たちの道徳」を子供が「持ち帰っている」と答えたのが157人の17・7%、「持ち帰っていない」が714人の80・7%、分からない・その他が1・6%だった。
また、「私たちの道徳」を「子供が授業で使った」と回答した人は508人の57・4%で、「使っていない」が317人の35・8%、分からない・その他が6・8%だった。
そのほか、回答者からは「持ち帰るように子供に言わせたら先生に許可された」(千葉県)との声が寄せられる一方で、「学校の本だから学校に置いておかないとダメと言われた」(京都府)「先生が管理する棚に収め子供たちが自由に読める状態ではない」(東京都)や「忘れ物をしないために持ち帰らせていない」(広島県)などの声も多数寄せられ、文科省の通知が行き渡っていない実態が浮き彫りになった。
同教材の配布をめぐっては、6月10日の衆院青少年問題特別委員会でも取り上げられ、上野通子文科政務官が「子供たち一人一人への確実な配布、家庭や地域での活用を引き続き働きかけていきたい」と答弁するなど、国会でも問題視されてきた。
下村博文文科相は7月11日の閣議後の会見で、同教材が多くの学校で配布されていないことについて、「7月8日付で都道府県教育委員会等に対し、事務連絡を発出し、特に夏休みなどの長期休業に当たり、本教材(私たちの道徳)を児童・生徒一人一人が持ち帰り、家庭や地域でも活用していただけるよう指導をお願いした」と述べ、3度目の通知を出したことを明らかにしたが、教育現場が適切に対応するのかが注目される。
【アンケート項目】
①家に持ち帰っていますか②道徳の授業で使いましたか③道徳教材について学校での状況をお書きください
道徳の教科化が肝要
八木秀次・麗澤大学教授の話 文科省は家庭と一体となって道徳教育をしようとし、国民の大多数が教科化を支持している。にもかかわらず、各教育委員会や学校現場が文科省の通知を無視するなど、日本の教育行政の構造的な問題が明らかになった。
教科化されていないことによる影響も今の事態(「私たちの道徳」を配らない事態)を招いている。いくら文科省が高い志を持ってやろうとしても、教育委員会や現場がついてこなければ、掛け声倒れで終わる。文科省に権限がない実態も明らかになっている。こういう事態であれば、やはり教科化が必要になる。教科書を使って、しっかり道徳の名前に値する授業が行われることが求められる。