ロシアで核水中ドローン搭載潜水艦が進水
ロシアは、核弾頭を搭載可能な高速水中ドローン「ポセイドン」を発進させられる初の潜水艦を進水させたことを明らかにした。米国にはポセイドンのような兵器はなく、専門家は、戦略核削減交渉で保有を禁止すべきだと警鐘を鳴らした。
ロシアのタス通信が23日に報じたところによると、この潜水艦は、「特殊目的」原子力潜水艦「ボルゴロド」とされており、ロシア北部セベロドビンスクの造船所で進水した。6発のポセイドンを搭載可能という。
1992年に建造され、2010年に改良が施されたオスカー級巡航ミサイル潜水艦の派生型とみられているものの、詳細は明らかにされていない。今後は水上で建造作業が進められ、今年後半に原子炉の試験、20年に試験航行、同年末までに配備の予定という。
米情報機関は、出力数十メガ㌧(広島型原爆の数千倍)の核弾頭を搭載可能とみている。米海軍はポセイドンに匹敵する兵器を装備していない。
ハイテン戦略軍司令官は2月、上院での公聴会で、「中国とロシアは、従来の戦略核戦力のトライアド(三本柱、大陸間弾道ミサイル=ICBM、潜水艦発射弾道ミサイル=SLBM、戦略爆撃機)の近代化だけでなく、米国を脅かす数々の核戦力の開発を進めている」と強調、ポセイドンは米国を脅かすための新型戦略兵器の一つだとして、これに対抗するための核兵器の近代化の必要性を訴えていた。
18年「核態勢の見直し」(NPR)でポセイドンは、ロシアの核兵器の一つとして、「新たな大陸間、核搭載、原子力、自律型魚雷」と記されている。
元国防総省高官のマーク・シュナイダー氏によると、ロシアの報道では、ポセイドンは100メガ㌧の弾頭や、場合によってはコバルト爆弾を搭載でき、大規模な港町を破壊することを狙ったものとされている。コバルト爆弾は、爆発とともに周囲に放射線をまき散らす一種の放射線兵器であり、殺傷力が極めて高い。
シュナイダー氏は、「港は低出力の兵器で機能を停止させることが可能であり、ポセイドンの目的は、何十万人もの民間人の殺傷だ」と主張。1隻の潜水艦に搭載されたポセイドンで米国の全戦略兵器以上の放射線を出せるのではないかと指摘した。
ポセイドンは10年の新戦略兵器削減条約(新START)の対象にはなっておらず、ロシア政府高官は、ポセイドンを制限する条約修正は受け入れられないと表明している。
シュナイダー氏は「ロシアは低出力の精密核攻撃で核戦争を開始する計画を持っている。ポセイドンの目的は、大量殺人の脅しで、核による反撃を阻止することにある」と指摘、新START延長交渉で「ポセイドンを制限するのではなく、禁止すべきだ」と訴えた。
プーチン氏は昨年3月1日にこの新型戦略水中ドローンを発表、「非常に深いところを」現在の魚雷の数倍の速度で長距離を移動することが可能であり、「この兵器に対抗できるものは世界には存在しない」と豪語していた。