中国 偽文書拡散
コロナ発生源工作でポンペオ氏演説捏造
中国は新型コロナウイルスの発生源は米陸軍とするプロバガンダを流布させてきたが、その一環として、米政府のものとする偽文書を国営のソーシャルメディア「微博(ウェイボー)」を通じて拡散させていることが、ポンペオ前国務長官とのインタビューで明らかになった。
SNS通じ信用失墜狙う
この文書が投稿、拡散され始めたのは7月。ポンペオ氏が2020年6月に米陸軍士官学校ウェストポイントの士官候補生らを前に内部向けに語ったとされるスピーチが掲載されている。7月30日までにアクセス数は340万回を超え、他のソーシャルメディアでの閲覧数も数百万件に達した。

ビル・ガーツ氏
米紙ワシントン・タイムズ(WT)の国防担当記者として、これまでにスクープ記事を多数執筆。2019年11月まで米保守系ニュースサイト、ワシントン・フリー・ビーコンの上級エディター。著書に『Deceiving the Sky(空を欺く)-地球的覇権狙う共産中国、活動の内幕』(Encounter Books)、『誰がテポドン開発を許したか』(文藝春秋社刊)など
ポンペオ氏は、捏造(ねつぞう)であることを指摘した上で、「いずれ、偽物であることがばれるのを承知の上で拡散されている。だが、これを読んだ世界の何千万人もの人々は、でっち上げであることに気付かず、(中国共産党は)この文書でさまざまな目的を達成している」と述べた。
また、中国は偽情報で、新型コロナの拡散、発生源をめぐる「隠蔽(いんぺい)工作」から注意を逸(そ)らそうとしているとポンペオ氏は指摘、「私の地位、信用をおとしめることで、今後の私の中国への非難をかわそうという狙いがある」と訴えた。
新型コロナは中国の武漢ウイルス研究所から流出したとの見方が強まる中、中国の国営メディアは日常的に、発生源は米国との主張を繰り返している。これは、バイデン米大統領が命じた、新型コロナ発生源をめぐる米情報機関の調査が間もなく発表されることと関連があるとみられている。
ウェイボーに投稿された偽文書は、表紙に米軍士官学校ウェストポイント「学部長室」と書かれ、「スピーチ録」とされた文書は、事実と偽情報を混合させるという高度な手法が取られている。
ポンペオ氏は、文書の「内部向けスピーチ」の部分が捏造され、米国は「血を流したり、兵士の命を失ったりすることなく」戦争で中国に勝とうとしていると書かれていると指摘、ポンペオ氏が「中国政府が台湾を攻撃したとしても」軍事衝突を回避するようトランプ前大統領を説得していたと強調している。
その上で、19年10月に武漢で開催された軍人スポーツ選手の競技大会「ミリタリー・ワールド・ゲームズ」の間に米陸軍が持ち込んだとする中国側の主張をポンペオ氏が確認したようだとしている。大会の開催は、新型コロナの感染が最初に確認される数カ月前だ。
文書は、ポンペオ氏が士官候補生らを前に「トランプ大統領が言った秘密兵器、それは、爆弾ではなく、今、世界に拡散している新型コロナのことだったことが分かったのではないだろうか」と、新型コロナは米国が意図的に流出させたという従来の主張をほのめかせている。
投稿は、「米国が生物・化学戦争を仕掛けた。ポンペオが、ウイルスを人為的に流出させたと話した」とタイトルが付けられ、「これを読めば、新型コロナの発生源がよく分かる」としている。