中国 新型ミサイル試射
米シンクタンク 射程延長、台湾攻撃想定か

ビル・ガーツ氏
米紙ワシントン・タイムズ(WT)の国防担当記者として、これまでにスクープ記事を多数執筆。2019年11月まで米保守系ニュースサイト、ワシントン・フリー・ビーコンの上級エディター。著書に『Deceiving the Sky(空を欺く)-地球的覇権狙う共産中国、活動の内幕』(Encounter Books)、『誰がテポドン開発を許したか』(文藝春秋社刊)など
中国軍が8月、内モンゴル自治区吉蘭泰の訓練場で、新型とみられるミサイルの試験発射を行っていたことが米シンクタンクの報告から明らかになった。台湾の飛行場攻撃の訓練または新型極超音速ミサイルの試射ではないかと指摘されている。
米空軍大学のシンクタンク、中国航空宇宙研究所が公開した報告によると、試射が行われたのは8月13日。1400㌔飛行し、飛行場内の二つの標的に命中したという。
報告は、試射について「これまでとは違う特徴を有し、(人民解放軍=PLA=ロケット軍が)台湾に特化したミサイル旅団の近代化を進めていることを示している」と指摘した。
中国国営メディアは、二つの「新型ミサイル」を発射したと報道。中国国内では、ミサイルは台湾海峡の対岸に配備されている613旅団の短距離ミサイル「東風15」と報じられている。
しかし、米国防総省によると、東風15の射程は800㌔しかなく、報告は、613旅団に射程の長い「東風21」や「東風26」、巡航ミサイル「長剣10」、または極超音速滑空ミサイル「東風17」が配備された可能性もあると分析している。
報告によると「これまでの試射では、東風17の射程は少なくとも1400㌔とされ、飛行経路も一致する。これらの兵器は、比較的新しいもので、『新型ミサイル』という説明とも一致する」という。
また、東風15の射程を延長した可能性もあるが、その場合は、東風17のような「滑空飛翔体」を内蔵している可能性がある。
米専門家によると、中国は先進兵器の試験や軍事演習を敵への抑止力や牽制(けんせい)に利用することがある。中国はこのところ、台湾防空識別圏への侵入を連日のように行っており、今回の試射も台湾への圧力強化の一環の可能性がある。
中国は、大陸間弾道弾(ICBM)「東風41」の格納施設の増強を進めており、吉蘭泰でも今年に入り、格納施設の建設が進められていることが確認されている。
米シンクタンク、国際評価戦略センター(IASC)のアナリストで中国問題専門家のリック・フィッシャー氏は、今回の試射について、東風15の射程延長または、東風15に代わる短距離ミサイルの配備の準備を進めているのではないかとみている。
フィッシャー氏は「2007年に導入された東風15Bは、耐用年数の終わりに近づいている」と指摘、「代わりのミサイルが配備される可能性がある。中国航天科技集団と中国航天科工集団は、モジュール式の第2世代(短距離ミサイル)を開発しており、これによって、台湾に向けられるミサイルが大幅に増加する可能性がある」と警告した。
中国は現在、台湾の対岸に1200発以上の東風15、東風16を配備している。






