米国 バイデン氏の支持率低下顕著

 就任以来、堅調だったバイデン米大統領の支持率の低下が顕著になっている。新型コロナウイルスの感染者増加や有権者のインフレ懸念に加え、アフガニスタンからの米軍撤退をめぐる混乱が影響している。支持率低下により、来年11月の中間選挙において民主党が苦戦するとの見方も出始めている。(ワシントン・山崎洋介)

アフガン情勢が追い打ち
中間選挙へ民主に危機感

 「ジョー・バイデン氏の政治的ハネムーンは正式に終わった」

 米CNNは先月下旬、低下傾向が鮮明になっているバイデン氏の支持率についてこう報じた。

8月26日、アフガニスタンで起きたテロ事件を受け記者会見したバイデン米大統領(UPI)

8月26日、アフガニスタンで起きたテロ事件を受け記者会見したバイデン米大統領(UPI)

 米政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の世論調査平均値によると、バイデン氏の支持率は8月29日時点で47・4%、不支持率が48・6%。就任当初は、支持が55%程度あり、不支持を20ポイント近く上回っていたが、今では逆転している。

 この大きな要因とされるのが、新型コロナウイルスの再拡大だ。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙などの世論調査によると、4月に69%がバイデン氏の新型コロナ対応を支持していた。バイデン氏は7月上旬の独立記念日の演説で、新型コロナからの「独立を宣言できる時が今までになく近づいている」と自信を示した。しかし、その後、デルタ株の感染拡大が進み、マスク義務化などの規制が再び強化される中、8月には新型コロナ対応への支持は53%に低下した。

 また、インフレ率が13年ぶりの高水準となる中、有権者の間で物価上昇への懸念が高まっていることが、バイデン政権の大きな課題として浮上している。モーニングコンサルト社などによる7月下旬の世論調査では、59%の有権者が最近のインフレについて、バイデン氏の政策に責任があると答えた。

 バイデン政権は、最近のインフレは一時的なものであり、パンデミック(世界的感染拡大)による閉鎖から経済が正常化する過程で生じる副産物であると説明する。これに対し、共和党議員はバイデン政権が提案し3月に成立した1兆9000億㌦規模の新型コロナ救済法が物価上昇の原因になっていると非難するなど、格好の攻撃材料となっている。

 さらに最近、これに追い打ちをかける形となったのが、混乱に見舞われたアフガンからの米軍撤退だ。NBCニュースが8月22日に発表した世論調査では、バイデン氏によるアフガン撤退の方法について支持したのはわずか25%で、60%が不支持だった。

 選挙専門家のチャーリー・クック氏は、アフガン撤退によってバイデン氏が統治能力への信頼を失えば、回復は容易でないと分析。「バイデン氏にとっての政治的危険は、この問題が能力への疑問を提起することだ。歴史は、有権者が大統領の能力に疑問を抱き始めたとき、信頼を取り戻すのは非常に難しいことを示している」と指摘した。

 共和党側は中間選挙に向け、南部国境からの移民の急増や国内における犯罪の増加と合わせ、アフガン撤退に関してバイデン氏が危機管理能力に欠ける弱いリーダーとして追及する姿勢を強めている。

 ワシントン・ポスト紙によると、多くの民主党関係者がバイデン氏の資質が疑問視されることで中間選挙で壊滅的な結果がもたらされることに危機感を抱いており、一部の民主党下院議員はバイデン氏の側近であるブリンケン国務長官やサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)が辞任すべきかどうかについて議論しているという。

 世論調査専門家のダグラス・ショーエン、カーリー・クーパーマン両氏は、米政治専門紙ザ・ヒルへの寄稿で、バイデン氏の支持率の低下について「おそらく民主党が2022年に下院の支配を失い、上院の支配も失う可能性を意味する。そしてバイデン氏が1期のみの大統領になる可能性がますます高まっている」と分析した。