欧州委員会は2019年9月に「欧州の未来に重要な記憶」を採択した。
欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会は2019年9月に「欧州の未来に重要な記憶」を採択した。これは1939年の独ソ不可侵条約を、第2次世界大戦を引き起こすことになった事件として位置付けたもの。
国際機関がナチスと共産主義を同等の倫理基準で批判したことで注目された。両者に苦しめられた東欧諸国で評価が高い。ナチスのユダヤ人虐殺については資料館がつくられ、数々の映画にもなった。
ソ連の共産党支配についても、おびただしい数の人々が粛清されたが、犠牲者の調査や、資料の保存、記念館の整備は進んでおらず、等閑に付されている。先月19日は、ソ連で91年8月に保守派によるクーデター未遂事件が起きてから30年。
ソ連のゴルバチョフ大統領が軟禁されたが、ロシア共和国エリツィン大統領の呼び掛けに市民が呼応し、クーデターは3日で挫折した。民主化が広がった事件として知られるが「民主革命の勝利」と評価するのは少数派(小紙8月19日付)。
ロシアの民主改革派の政治家グリゴリー・ヤブリンスキー氏は、時事通信のインタビューで「スターリン主義とソ連が犯した罪に関する法的評価の欠如」を指摘した。また、ハイパーインフレで「お金は価値を失い、権力と富がつながり、マフィアになった」と回顧。
冷戦を終結させたゴルバチョフ氏は西側で評価が高いが、国内では人気が低い。共産主義の呪縛が解かれていないのだ。