名護新市長、経済効果に期待高まる
名護市長選、辺野古移設容認の渡具知氏当選
インフラ整備と地域の経済発展に期待が高まる
4日の沖縄県名護市長選で、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古への移設を容認する立場の渡具知(とぐち)武豊(たけとよ)氏が勝利した。一貫して「条件付き容認」の辺野古の住民は渡具知氏の当選を歓迎、インフラ整備と地域の経済発展に向けて期待が高まっている。(那覇支局・豊田 剛)
稲嶺市政8年間で地元住民置き去り
沖縄県内全体では観光を中心に好景気に沸く中、沖縄本島北部の玄関口である名護市は「取り残されてしまっている」というのが渡具知氏の主張だった。その中でも、インフラ整備の遅れが目立つのは米海兵隊キャンプ・シュワブのある辺野古地区だ。
稲嶺進・前市長は2期8年の市政の間、キャンプ・シュワブのゲート前に何度も足を運び、反対運動に加わり、辺野古移設に強く反対する姿勢を堅持した。ところが、「一度も辺野古住民と対話の場を持っていない」(宮城安秀市議)のだ。
過激な反対運動は地域住民の生活を苦しめてきた。米軍車両や工事関係車両の出入りする朝と夕方は、活動家がゲート前に立ちはだかる影響で、周辺の道路は渋滞し、通勤者や観光客が大きな影響を受けている。また地域住民は、度重なる違法駐車と、それが原因の環境被害も訴えてきた。
こうした中、嘉陽宗克辺野古区長は2015年、辺野古区民の「総意」として、ゲート前の違法構築物などの撤去、違法駐車の取り締まり強化などを求めて、市議会と北部国道事務所へ陳情書を、市と名護警察署に要請書を提出した。
ところが、稲嶺氏はこれに対して回答しなかったどころか、一度も辺野古住民(一部反対派を除く)から話を聞いていない。翌年9月の市議会定例会本会議でようやく陳情を賛成多数で採択したにもかかわらず、現在に至っても改善されていない。
インフラ整備を求める住民の声も届かなかった。市東側の久辺3区(辺野古、久志、豊原)には下水道処理施設がない。地元の建設業者によると、「住宅に浄化槽設備を造る場合、下水道のある西側の市街地と比べて値段が4倍になる」と指摘する。
渡具知氏の当選は、インフラ整備とゲート前の治安維持を願う久辺3区の多くの住民にとっては悲願だった。防衛省は、2018年度当初予算案で3区に1億2千万円の補助金、名護市への再編交付金の再開の検討を始めた。
それに加え、名護市を含む沖縄本島北部振興事業予算は一括交付金とは違い、12市町村で構成する事務組合に国が直接交付するもので、2010年代、少なくとも年50億円を計上してきたが、19年度から増額する方向で検討に入ったことも明らかになった。
インフラ整備放置した稲嶺前市長
辺野古商工社交業組合前会長 飯田 昭弘氏
今回の選挙の結果は渡具知氏に対する期待と、稲嶺氏に対する不満がはっきり表れた。
渡具知市政で市民生活が向上し、豊かになることを望む。1970年に5町村が合併し、名護市が誕生して以来、旧久志村(辺野古を含む)地域はインフラ整備がされていない。市街地と比べて生活環境の差がある。反対だけ言って、何も良くなっていない。
実際、久辺3区(辺野古、久志、豊原)には2000人の沖縄高専の学生と就業者がいるが遊び場も店もない。市民本位の政策で、地域が賑(にぎ)わうような街づくりに期待したい。
稲嶺氏は普天間飛行場の代替施設の建設工事を止められなかった。住民たちは止めれないのであれば、せめてインフラ整備をしてくれと8年前から言い続けてきたが、県や市に話をしても、親身になって考えてくれずに拒否され、むしろ、国の方が寄り添ってくれた。
稲嶺氏は1度たりとも辺野古の住民から話を聞いていない。実際、座り込みをしているほとんどは辺野古の人ではない。工事が終わったら皆いなくなる。反対運動はゲート前の交通を妨げることが多く、交通がマヒする。基地に入るダンプの運転手には名護市民が多い。止められると仕事が成り立たない。
米兵による事件事故は残念なことで、基地がない方がいいに決まっている。しかし、国防は国の専権事項であり、1999年の岸本建男市長の時に閣議決定した。これを覆すことはできない。(談)