「公明」の教育特集 奨学金制度改革訴える識者

 大学受験シーズンもたけなわだが、待ちに待った合格発表の後に来るのが高い入学金・授業料の振り込み手続きだ。高学歴化が進んだ社会では、高い教育費が少子化の一因にもなっている。公明党の機関誌「公明」3月号は特集2番目に「グローバル化と教育制度改革」を組み、この中で東京大学・大学総合教育研究センター教授・小林雅之氏が「教育費国際比較から見た経済的支援」と題して教育費問題のテーマを扱った。

 副題に「~所得階層による進学の格差拡大を防ぎ教育機会均等を促す給付奨学金や所得連動型返済制度などの構築~」とあり、今後の教育制度改革の焦点の一つでもある。

 我が国の奨学金は日本学生支援機構の第一種(無利子)、第二種(有利子)が一般的だが、学生が卒業後にローン返済するものだ。給付額にもよるが4年間受ければ数百万円の借金を抱えての卒業となる。

 同奨学金の貸与人員にも制限があるが、政府は2015年度予算案で第一種を1万9000人増やして46万人に拡充し、第二種は8万人減らして87万7000人にする。また、年収300万円世帯の学生の場合、卒業後に300万円以上の年収を得るまで返済を猶予される所得連動返還型無利子奨学金制度が導入されている。

 文部科学省では、奨学金の返還月額が卒業後の所得に応じて増減する「所得連動返還型奨学金制度」の導入に向けて制度設計を進めるが、2016年に社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)が導入されるに伴い実現させる方向だ。

 小林氏は、「各国の問題の中でも深刻なのは、授業料の高騰に対して並行して増額されたローンの負担やローン回避と呼ばれる問題」だと訴えている。「学生や家計は将来の負担を恐れてローンを回避する傾向がある。とりわけ低所得層ほどローン回避し、低廉な教育機会(短期高等教育や自宅通学など)を選択したり、ひいては進学しない傾向がある」と述べ、このために「進学の格差が拡大する恐れがある」と懸念を示している。

 さらに、「これからの世代は、医療、年金、介護、税など負担が増えることは確実である。『無理する家計』の無理が続かなくなる恐れがある。このため、奨学金を中心とする学生への経済的支援を拡充させることは、教育機会の均等のため早急に対策を講じる必要のある政策課題である」と強調した。

 返済額が毎月一定額のローン返済では就職後の所得が低いほど負担が増すが、所得に応じて返済額が変われば低所得者にとって負担が和らぐ。所得連動返還型奨学金制度の導入には下村博文文科相も言及しており、「公明」の同特集記事は政権与党としての教育政策に反映される方向にある。厳しい財政事情はあろうが、若年層への予算投入を増やすことは深刻な人口減少問題を改善する対策としても期待される。

解説室長 窪田 伸雄