共産党の議案提出 最初に政党助成法廃止案

「国民の声」より党利党略

 日本共産党は1月5日の党旗開きで志位和夫委員長が政党助成金廃止法案提出を表明し、通常国会が開会した26日に同法案を提出した。機関紙「しんぶん赤旗」1月27日付は1面でこれを報じ、2面の「主張」、3面の連載、15面の社会面などで扱った。

 「政党助成法廃止法案は、志位和夫委員長をはじめ党衆院議員がそろって向大野(むこおおの)新治衆院事務総長に手渡しました。提出後、志位氏は国会内で記者会見し『議案提案権を衆参で獲得することができた。有効に行使して、現実の政治を一歩でも二歩でも動かす努力をしていきたい』と表明しました」と、1面記事・写真で議案提出権獲得をアピールした。議案提案は衆院で20議席以上、参院で10議席以上が必要だが、昨年12月の衆院選で共産党は21議席を得た。

 最初に政党助成法廃止を選んだのは党利党略的だ。記事リードにある志位氏の議員団総会での言葉「国民の声、国民の願いを国会に届ける『代弁者』」というよりは、政党交付金を受け取らない共産党が他党の資金源を断ちたい意図がある。

 「主張」では、「支持政党や政党を支持するかどうかに関わりなく国民に一律に負担させる政党助成金は、国民の『思想・信条の自由』や『政党支持の自由』に反する」と、廃止を求める理由を述べている。

 総務省HPには「政党助成制度は、国が政党に対し政党交付金による助成を行うことにより、政党の政治活動の健全な発達の促進及びその公明と公正の確保を図り、もって民主政治の健全な発展に寄与することを目的とした制度です」とある。衆院選挙制度を中選挙区から小選挙区比例代表並立制度に変えた政治改革とともに導入された政党助成制度によって新党を結成しやすくなった。

 これを同紙「主張」は「自民党は約6割、民主党は8割も助成金で財政を賄っています。しかも政党助成金を受け取る政党として届け出る時期になると新党の結成や解散が相次ぐように、税金頼みの活動は政党そのものを堕落させています」と批判。3面連載「政治劣化の元凶!」では「政党乱造」と攻撃する。

 が、政党助成制度が政治家の「結社の自由」を促した意義はあり、政党交付金によって政党が劣化、堕落しているわけではない。新党の失敗例は人の問題や選挙による淘汰だが、これまで新党が批判票の受け皿となって一定の民意を担った役割は評価できる。政治改革後の新党複数は民主党にまとまり、一度は政権交代を実現した。資金力のない小勢力が助成を頼みとする結党も、影響力を増やして有権者の声を届けようとする姿勢に変わりはない。

 一方、政党交付金を受け取る政党は政府に使途公表する義務がある。共産党の受け取り拒否は、党の経理報告を通じて活動が政府に把握されるからという見方がある。共産党は革命政党で組織も大きい。

 ただ、最近は政党交付金で党財政を賄えという声も党内にあるようだ。党執行部は議案提出の行動でこれを完璧に否定したことになる。

解説室長 窪田 伸雄