「自由民主」の選挙分析
業績評価し「格差」に警鐘/民意検証した川上和久氏
自民党の機関紙「自由民主」は1月20日号と1月27日号で、同紙が「計量政治分析の第一人者」と紹介する明治学院大学教授・川上和久氏による「『振り子現象』に終止符~与党圧勝をもたらした民意~」を上下で連載した。
12月衆院選での自民、公明の与党圧勝を「2年間の安倍政権の歩みに、一定の『業績評価』がなされた」とみる川上氏は、選挙結果の民意の特徴として次の四つを指摘した。
①「自民党の今回の比例代表での得票数は、投票率が下がったにもかかわらず、1765万8916票と、2012年の衆院選から約100万票上乗せされている」、②「民主党は…977万5991票で、そこから15万票上乗せしたに過ぎず」、③「約1000万票もの『第三極票』が消えたことになる」、④共産党は「2012年の比例代表368万9159票から今回は606万2962票と240万票近く伸ばした」(20日号)。
この票の出方について川上氏は、①に「有権者の、景気回復の道を着実に歩んでほしいという思いが託されている」、②に「有権者の『怒り』は、民主党が政権を離れて2年経ってなお、収まっていない」、③に「『第三極』といわれた政党群に対する、有権者の醒(さ)めた感情」、④に「受け皿としての共産党の躍進」と評した。
一番大きい変化は③の「1000万票」で、かつて09年衆院選で政権交代に期待した批判票が12年衆院選では日本維新の会やみんなの党など「第三極」に流れた票だった。その票の今回の流れの目安だが、各党の上乗せ票、自民100万、共産240万、民主16万、無投票の上乗せ約694万(比例区投票率は前回より6・66ポイント減、有権者1億424万9187人)を加えれば、1050万で「第三極」から消えた約1000万とおおむね一致する。
27日号で川上氏は四つの「民意の特徴」を踏まえ、①について景気回復のため「成長戦略…『第三の矢』の飛んでいく速さと方向をしっかりと定めてほしい」、②について自民党は「民主党政権の轍(てつ)を踏むことなく財源の確かな裏付けのもと有権者が安心できる政策を遂行すること」、③について「ポピュリズム疲れした有権者に、しっかりとした設計図を提示し安心感を与える」、④について「共産党躍進に表れた『格差』顕在化の予兆に対し、しっかりと政策で応えること」―を提言した。
民主党への怒りが収まらず、「第三極」には醒めた無党派の多くが無投票というのは宜なるかなであるが、革命政党の共産党に240万も流れるのは看過(かんか)できない。政権交代システムのための選挙制度改革が機能不全に陥った症状である。
が、だからこそ自民党にとっては、05年衆院選自民圧勝、09年衆院選民主党圧勝、12年衆院選自民圧勝の「振り子現象」に今後は終止符を打つ――長期政権へのチャンスなのだ。
解説室長 窪田 伸雄