党勢・政策に結びつくか、自民党の青年運動

街頭行動や「プレゼン」大会

 自民党の機関紙「自由民主」(6・10)1面に「青年部青年局全国100カ所で一斉街頭行動」の記事が載った。記事によれば、同党青年部・青年局の全国一斉街頭行動は平成16年(2004年)から「北朝鮮による拉致問題の解決」をテーマに行われており、今年は安全保障や憲法改正問題も取り上げたという。

 04年といえば、5月に小泉純一郎首相が北朝鮮を再訪問し、02年に帰国した蓮池薫さんらの子供が帰国して、他の拉致被害者帰国の機運が高まった。その後の膠着状態を経て5月、日朝協議により北朝鮮は日本人拉致被害者の再調査をすることで合意し、安倍晋三首相が記者会見している。

 記事の見出しも「拉致の全面解決を訴える」で、東京・新宿駅西口で行われた石破茂幹事長、同党青年局長の松本洋平衆院議員が行った街頭演説を伝えるものだ。これに安保、改憲を加えた経緯は同紙6月3日号「全国青年部長・青年局長合同会議」の記事で、同会議の中で「提案され、了承された」と伝えている。

 これは、自民党が本来の主張を街頭で訴える攻勢にようやく転ずるものだ。邦人拉致は被害の訴えであり、反対する者は誰もいない。安保・憲法はどうかといえば、戦後の左翼学生運動はじめ反安保、護憲が若年層に支配的だった。昭和の安定政権にあった自民党国会議員にも党是とは別に「護憲ハト派」を自称して世論受けを狙う向きもあった。

 しかし、憲法改正、集団的自衛権行使容認など安保政策をめぐる街頭行動は、依然として共産党や社民党系の反対運動が先行している。同紙6月10日付には石破茂幹事長の演説要旨が載るが、自民党として今後も街頭での丁寧な説明が必要であろう。

 また、松本青年局長は「これからも青年局は憲法改正や拉致問題などに関し世論を喚起するために、地道に訴え続け、若い力で政治を変え、日本を変えていく」と訴えたという。

 今年の自民党運動方針では「足腰の強い青年組織を整備する」と謳(うた)われており、「政権復帰の原動力」として「青年局メンバーへの国内外の研修活動」を挙げていた。実際、自民党は政権を失った2009年衆院選での大量落選で世代交代が進み、09年衆院選の当選議員平均年齢は56・6歳だったのが、12年衆院選で52・3歳に若返った。45歳以下の青年局で役員を務める衆・参院議員は87人いる。

 また、6月3日号によれば、同合同会議で石破幹事長、竹下亘組織運動本部長が党勢拡大と選挙運動に強い期待を表明している。また、今秋に東京で都道府県連青年部・党青年局が政策公募し「政策プレゼンコンテスト」決勝大会を開くことについて、「党の政策立案に生かしていくことが狙い」だという。

 これら街頭行動やイベントも今のところは「研修」という養成段階の印象だ。しかし、自民党は女性議員が増えたことにより女性政策の議員立法を立案したように、青年議員・党員が増えることにより若年対策への関心が注がれ政策力が向上する可能性はあろう。

解説室長 窪田 伸雄