保守層を取り込む革新懇、共産党の「一点共闘」
「九条」に柳澤協二氏ら
日本共産党が党大会や幹部会で党勢減退の報告をする中で、「一点共闘」の取り組みを強調している。政策それぞれ一点限りでもよしとして共闘のハードルを下げれば、組み得る「一点」が分厚い保守層にまで広がり運動量を増やせる。
共産党の機関誌「前衛」7月号には「全国革新懇『一点共闘』と政治を変える共同の発展をめざす懇談会」の記事が載った。
4月17日に国会内で開かれた「懇談会」をまとめたもので、やんばる統一連代表の吉田努氏、共産党十勝地区委員長・佐藤糸江氏、全日本民医連副会長の長瀬文雄氏、一橋大学名誉教授・九条の会事務局員の渡辺治氏、共産党の志位和夫委員長らが報告している。
全国革新懇(革新懇)は「平和・民主・革新の日本をめざす全国の会」の略称で1981年に結成された。東西冷戦下の保革対決時代に社会党との革新共闘が挫折してから独自に革新層の取り込みを狙って発足した統一戦線だ。
記事によれば、志位氏は「一点共闘」の成果として、①無党派の新しい市民運動②保守といわれてきた人びと③ナショナルセンターを超えた労働運動④地方の自治体―との共同を挙げる。これらを志位氏は「運動の中に生まれている“新しい質”」と呼び、「『一点共闘』が互いに連帯し、大きな国民的な共同の流れをつくりだしていくうえで、『要』の役割を革新懇運動は担っている」と訴えたという。“質”と言うからには唯物弁証法の「量質転化の法則」が念頭にあろう。
原発、憲法、集団的自衛権、TPP、労働者派遣法、在沖縄米軍基地、その他のさまざまな案件をめぐり、革新懇を通じて「共同」を働きかけて運動量を拡大し、これらを連帯し「革命」とまでいかなくても「国民的共同」ぐらいには転化するつもりだ。共産党にとって現時点の「国民的な共同」とは、安倍晋三首相に反対することだ。大会決議以下党の各文書で「安倍政権の暴走」批判が枕詞になっている。
その際、目立つのは保守サイドからの批判を誘っていることだ。同誌には、九条の会事務局員・渡辺氏が「自衛隊のイラク派兵を指揮した、当時内閣官房副長官補の柳澤協二さんは、今回の安倍政権の解釈改憲、集団的自衛権行使容認の動きにはついに反対の声をあげるに至りました……今まで九条の会と名のつくものに一度も出たことのなかった柳澤さんが、昨年の一一月一六日、九条の会の全国討論集会にシンポジストの一人として参加をしました」など、「保守といわれた人びと」との共同を報告している。他に「野中広務さん」「古賀誠さん」の名を挙げ「広範な良心的保守層」と「九条改憲に反対するという一点で共同する」ことを訴えている。
志位氏は「憲法問題では、保守の方々、元自民党の幹部、歴代法制局長官など、これまで対立していた人とも思い切って共同を追求する」と述べており、「一点共闘」を「とことん発展させ」て「統一戦線」に結びつけるよう檄を飛ばしている。
解説室長 窪田 伸雄










