世界支配のため米国の技術盗む中国
ビル・ガーツ氏、新著で警告
米紙ワシントン・タイムズのベテラン安全保障担当記者ビル・ガーツ氏の新著『Deceiving the Sky(空を欺く)』が3日に発売された。一部を抜粋する。
――「こんにちは。お宅では『ポイズンアイビー・プログラム』を販売していますか? それはいくらですか? アンチウイルスソフトによって検出され、駆除されないものを購入したい」
この電子メールは、中国人民解放軍(PLA)で諜報(ちょうほう)活動を担う特殊な部門の将校から、中国のサイバーセキュリティー会社に送信された。この組織は、正式には総参謀部第3部として知られている。
米情報当局は、このスパイ組織を単に「3PLA」として知っている。そして、それは中国共産党がサイバー攻撃を通じて米軍の技術を盗む最も成功した手段となってきた。中国の2番目の軍事情報収集部門は、総参謀部第2部(2PLA)と呼ばれる。同第4部(4PLA)は、電子スパイと電子戦の両方を実行する。
これらの部隊によって、中国は諜報活動の面で米国の安全保障を脅かす最も深刻な脅威となってきた。この三つの部門が緊密に協力しつつ、米国から広範囲の秘密を盗んでいる。情報がデジタル形式であれば、彼らはそれを盗む。
ポイズンアイビーは、PLAが好むソフトウエアとして国際的なハッカーの世界でよく知られている。これは遠隔操作を可能にする「リモート・アクセス・ツール(RAT)」で、国際的なハッカーの闇市場で最先端のソフトウエアではないものの、3PLAにとっては極めて効果的なサイバー攻撃による情報収集の武器であることが判明した。
ポイズンアイビーが非常に広く使用されている理由は簡単だ。マイクロソフト社ウインドウズのオペレーティング・システムを使用するすべてのコンピューターとネットワークを簡単に餌食にできるからだ。内部に侵入すると、マルウエア(悪意あるソフト)は遠隔操作によるリモートキーロギング(キー入力の監視・記録行為)、画面・映像キャプチャー、ファイルの大量転送、パスワード盗難、システム管理へのアクセスなどを可能にする。
サイバースパイソフトのポイズンアイビーを求める3PLAの将校によるメールは、米国家安全保障局によって傍受され、最終的にスー・ビン(別名スティーブン・スー)という中国の主要なサイバースパイ実行犯の逮捕と有罪判決に繋(つな)がった。スー・ビンの事件は、「アメリカ帝国主義」を打ち負かすための力を構築するため、ボーイングなどの防衛請負業者から米国の兵器技術を盗む中国軍の絶え間ない活動を初めて明らかにした。「アメリカ帝国主義」は、中国共産党の主要な敵である米国を示すために中国の多くの内部文書で使用される用語だ。
軍事情報機関は、中国の目標である情報の優位性を達成する上での戦略的プレーヤーとなる。これは、平時と戦争の両方で主要な敵を荒廃させ、世界的覇権を達成する道を開く最初のステップだ。
(ワシントン・タイムズ特約)