「債務の罠」に陥る途上国、中国「一帯一路」の問題点浮き彫り
米大学報告
中国の大規模経済圏構想「一帯一路」はこれまで、途上国への融資の条件が不透明などの問題が指摘されてきた。
米ウィリアム・アンド・メアリー大学の研究機関エイドデータは最新の報告で、開発途上国が「隠れ債務」を受け入れ、「債務のわな」に陥る仕組みなど、これまで明らかにされてこなかった一帯一路の詳細を公表した。
エイドデータが9月29日に発表した報告によると、習近平中国国家主席が2013年に一帯一路構想を明らかにする数年前からの165カ国、1万3427件のプロジェクトを調査した。融資、支援金の総額は、8430億㌦に上り、その多くで中国の資材と労働者を使うことを要求、相手国の重要資産を抵当に設定していた。
中国政府は「契約で融資先に中国の(鉄やセメントなどの)資材を使わせるよう義務付け」るとともに、「中国への天然資源の輸出で得た資金を返済に充てさせている」という。「こうして担保化することが、ハイリスクで実入りのいい融資戦略を中国が実行する基幹部分となっている」と、報告は指摘している。
「隠れ債務」に関しては、中国の海外融資の約70%が「国有の企業・銀行、特定目的会社、共同事業、民間機関向け」で、「大部分は政府のバランスシートには記載されない」という。これによって、「民間部門と公的部門の区別があいまいになり、公的な資金管理が難しくなっている」。
エイドデータの研究員で、報告の共同執筆者、アマル・マリク氏は、中国政府は「開発融資についての詳細を開示せず、それによって低中所得国が一帯一路への参加によって失うものと得るものを評価することが困難になっている」と指摘した。
米政府は長年、一帯一路の中で貧困国に返済能力以上の融資を行う「債務のわな」を警告してきた。これによって中国は、債務の減免と引き換えに、政治や天然資源をめぐって譲歩をもぎ取ることが可能になるからだ。
42カ国で対中公的債務が国内総生産(GDP)の10%を超えており、「バイヤーズ・リモース(買ってから後悔する)」になる開発途上国が増加する可能性があると、報告は警告している。
近年、一部の国で一帯一路に対する不安の声が聞かれるようになった。マレーシア、パキスタン、モルジブ、スリランカなどだ。マレーシアは「新手の植民地主義」だとして200億㌦超のプロジェクトをキャンセル。スリランカは、15億㌦の返済が遅れ、ハンバントタ港の管理権を中国国有企業に譲渡せざるを得なくなった。
米シンクタンク、外交問題評議会の今年の報告によると、「サブサハラ(サハラ以南)の39カ国、欧州・中央アジアの34カ国、東アジア・太平洋地域の25カ国、中南米・カリブ海の18カ国、中東・北アフリカの17カ国が一帯一路に参加。中国を含む一帯一路参加国のGDPは世界の4割に当たる」という。
エイドデータの報告は、「中国政府が一帯一路への支持を維持するには、受け入れ国の懸念に対処する必要があることが明確になってきている」と指摘。先進7カ国(G7)は、6月の首脳会議で導入に合意したインフラ整備構想「より良い世界の再建(B3W)」の下で米国と同盟国が「結集」し、一帯一路に対抗することを呼び掛けている。
(ワシントン・タイムズ特約)