個人プレーかチームプレーか
プロ野球の元巨人軍監督、川上哲治さんは現役時代に「打撃の神様」の異名をとり、監督としては王貞治さんや長嶋茂雄さんらを率いてV9(9年連続優勝)の偉業を成し遂げた。「中途半端だと愚痴が出る」などの名言を残している。
川上さんに「野球で何が一番大切ですか」とお聞きしたことがある。陳腐な質問なのに「そりゃ、キャッチボールだよ」と丁寧に答えて下さった。「自分の肩の調子を考えてボールを投げる人が多いが、そうではなく常に相手の受けやすいところへ投げる」。それが身に付くと、どんな場面でもチームプレーができるようになる
シーズン終盤になると、選手は来季のことを考えて自分の成績が気になり出し、個人プレーに走りがちだ。川上巨人は阪神と首位を競り合うことが多かったが、9月になると抜け出した。それはチームプレーに徹せたからだという。
今年の首位争いは、セ・リーグがヤクルトと阪神、パ・リーグがロッテとオリックス。昨年の覇者ソフトバンクと巨人は後塵(こうじん)を拝している。緊急事態宣言が解除されたので今年こそ美酒を味わいたい。ファンはやきもきしていよう。
自民党総裁選は個人プレーの河野太郎氏が負け、チームプレーの岸田文雄氏が勝った。そんな解釈も成り立つのではあるまいか。
川上語録には「組織のリーダーは、自らがよく思われたいという我執を捨てなければならない」ともある。岸田新総裁にこの言葉を贈りたい。