スリランカの「ガマダ」に学ぼう

エルドリッヂ研究所代表 政治学博士 ロバート・D・エルドリッヂ

官民協力し地域活性化
若者のエネルギーと知性活用

ロバート・D・エルドリッヂ

エルドリッヂ研究所代表 政治学博士
ロバート・D・エルドリッヂ

 復活祭祝日の4月21日、スリランカの国際ホテルや複数の教会で起きた恐ろしいテロ事件に世界は震撼(しんかん)した。用意周到で計画的な犯行は279人の人々の命を奪った。犠牲者の中には日本人女性も含まれており、彼女の家族を含めて数百人が負傷した。あれから数週間後、テロのショックから癒えないうちに、サイクロンがスリランカを襲った。激しい風雨は洪水をもたらし、甚大な被害を受けた。

 これらが発生する前の3月、私が顧問を務め、日本を含む6カ国から構成する災害の緊急対応などを専門にしているアジアパシフィックアライアンス(A―PAD)のスリランカ支部で働く友人や同僚と再会できた。私たちは、日本の外務省が後援するフィリピンの国際会議に参加していた。

情報を収集・共有し行動

 スリランカからの参加者の一人、ヤサラス・カミルシリ氏は国内の災害報道をするメディア専門家で、ガマダと呼ばれる地域活性化に取り組む比較的に新しい組織のメンバーだった。ガマダは、シンハラ語で、「村の中」を意味するそうだ。1週間、共に過ごし、ガマダに関連する学生グループについて説明してくれた。組織の自発性と情熱を見ていると、25年間の内紛、そして度重なる自然災害(2004年のインド洋津波を含む)などの危機が襲っている中でも希望的だ。

 スリランカは1948年にイギリスから独立し、現在の人口は約2200万人。そのうち半分以上が40歳以下と平均年齢が若い。若者の識字率は98%で、南アジア諸国の中でも最も高い国の一つだが、公立大学の定員が限られているため、高等教育で学べるのは5・1%でしかない。スリランカの世界人助け指数は世界で8位だ。先進国でないにもかかわらず、奉仕や寄付に参加するなど同情心が強いことを意味する。しかしながら、スリランカには健康医療、高等教育を受ける機会、貧困、社会問題などの諸問題も存在している。

 スリランカの報道機関ニュースファーストは2013年以来、こうした地域や個人の問題の検証に力を入れるようにした。ガマダ・イニシアティブという。続いて、地元大学と連携し、16年から18年まで3年連続で、世帯ごとの問題調査を実施した。

 ガマダは情報収集にとどまらず、地域活性化、「事実に基づいた行動」にも余念がない。報道機関の若者は情報に基づき、数百ものプロジェクトを企画した。100日の間に自治体や若者との連携を通して取り組んだ結果、驚くことに全ての地域プロジェクトを完遂した。

 報道機関とそのパートナーが全ての社会に築いたネットワークと情報・IT技術を融合させることで、発足からわずか数年で成功に導くことができた。成功の主な要因は、ガマダが創設した若者によるボランティア・グループで、活動やイベントの情報にオンラインでアクセスすることができる。

 このような民間セクター、メディア、大学、非政府組織、非営利団体、地方自治体(特に人口減少に苦しんでいる)による国家レベルでの協力は、日本の問題に対処する上で可能性を感じるものだ。私自身、中小規模の1000ものプロジェクトが頭に浮かぶ。幸い、現代の若者は、一般に人々が考える以上にこうした問題に対する意識が高い。若者のエネルギー、情熱、知性をぜひ活用しよう。

 来年夏の東京五輪を前に、東京の街角、地下鉄、駅のホームの清掃を含め、やるべきことはたくさんある。皆の努力が集結すれば素晴らしいことになる。

姉妹都市締結し導入を

 日本は現在、スリランカの姉妹都市締結は3市しかない。それがもっとあれば、より多くの日本の自治体がガマダについて知ることができ、自分や地域にいち早く導入することができたはずだ。

 スリランカ民間セクターによる公共政策の問題解決の努力から学ぼう。そうすることで、日本と世界は最近のようなテロ攻撃に苦しむ国と関係を強くし、その国と自国に希望をもたらすことができる。ガマダの詳細は、ウェブサイトhttp://www.gammadda.lk/が参考になる。より良いのは、スリランカとの姉妹都市を締結し、関わることだ。