新START延長交渉、中露の核増強に懸念
中国の核戦力増強への懸念が高まり、ロシアによる新戦略兵器削減条約(新START)違反の可能性が指摘される中、トランプ政権はこの条約を延長するかどうかの検討を進めている。
トンプソン米国務次官(軍備管理・国際安全保障担当)は今月中旬、上院外交委員会の公聴会で「何も決まっていない。議会と協議しながら、今後の対応を決めていく」と述べた。条約は21年初めに失効する。
トンプソン氏は、「ロシアは攻撃的な新型戦略兵器を開発し、非戦略核兵器を増強、中国は核戦力の近代化と増強を進めている」と、中露が核武装を強化していることを強調。「中国は2大核保有国への制限の恩恵を受け、自由に開発を進められる。核近代化計画の規模について透明性が欠けていることもあり、中国の核に対して疑念が生じている」と中国に対する不信感をあらわにした。
その上で「新たな脅威に対処するために、現状を反映した新時代の武器管理が必要だ。中露を武器管理交渉のテーブルに着かせることを模索する」と中国を巻き込んだ新たな枠組みの必要性を訴えた。
トラクテンバーグ国防副次官(政策担当)も、「残念ながら、中露は、核戦力の拡大、技術の向上に意欲的に取り組んでいる」と指摘。「核攻撃と、核保有国間の通常兵器による大規模戦争を阻止するために、強靭(きょうじん)で近代的な核抑止力が必要だ」と米国の核開発の重要性を訴えた。
ロシア軍は、新型の長距離ミサイル、極超音速ミサイル、原子力巡航ミサイル、水中核ドローンなど複数の戦略兵器を開発しているが、新STARTに直接、抵触するものはない。新たな戦略兵器については、条約で2国間の協議が義務付けられているが、ロシアはこの義務を果たしていない。
中国も、新型の長距離多弾頭ミサイル、ミサイル潜水艦、戦略爆撃機の開発など、核戦力の増強を意欲的に進めている。中国はこれまで、核戦力の公表につながり、抑止力が失われるとして、武器管理交渉を拒んできた。米中間で軍の信頼構築を目指し交流が積極的に行われてきたが、中国の情報開示拒否の姿勢は変わっていない。
中国外務省の陸慷報道官は、トンプソン氏の議会での証言を受けて、新START延長交渉への参加拒否を改めて表明。「(米露の核兵器とは)規模が違い、同列には論じられない」とした上で、「3カ国間のいかなる兵器削減交渉にも参加しない」と述べた。
一方で陸氏は、米露間の武器管理条約延長を支持、米国は中国の核増強を、自国の核削減を避ける「言い訳」にしていると非難した。
陸氏は、中国は軍拡競争には加わらず、他国を核で保護することもしないと述べた。だが、中国は1980年代にパキスタンに核兵器の設計情報を提供。これを基にパキスタンが核武装し、その設計情報はその後、イラン、リビア、北朝鮮にも拡散した。






