政策訴える「自由民主」 希望より「新党ブーム」批判
立憲・共産共闘に言及なし
衆院解散から総選挙終盤までの間、自民党の機関紙「自由民主」は10月10日付、17日付、24日付(実際の発行は日付の1週間前の火曜)が出た。党総裁の安倍晋三首相が打った解散であり、自ら選挙に問うた二つの国難――「北朝鮮の脅威」や「少子化対策」に全力で取り組む(10・10)と、継続して訴えている。
加えて「ブームか政策か」の争点を新党に応酬したのが、選挙戦も終盤に入る24日付「政策こそが未来を切り拓く」(1面見出し)だ。同紙3面に載る「安倍晋三総裁は語る」という選挙戦問答はポイントを三つに絞り、前述の二つに次いで「新党ブーム」を加えている。
聞き手の三原じゅん子参院議員が、「選挙は、『政策』で競い合うべきです。しかし今回は、突然、新しい政党が生まれ、『政策』そっちのけの離合集散ばかり。わかりにくい選挙です」と水を向けると、安倍首相は「これまで、たくさんの政党が生まれては、消えていった。2009年にも民主党ブームがあった」「未来を切り拓くのは、『ブーム』ではありません。『政策』なのです」と述べ、政権奪還後の雇用増加などの成果を訴えている。
ただ、具体的な党名には触れていない。自民党が警戒しているのは、新党でもブームを呼んでいる新党だ。公示前は、「野党の流動化が進む中、選挙で戦う相手は『希望の党』だ」(10・10)と、9月30日の同党全国幹事長会議での塩谷立(しののやりゅう)選挙対策委員長の発言を引用しながら、希望の党を名指しした。
公示日10日の第一声を扱った「安倍総裁 福島から渾身の第一声」の記事(17日付)では、安倍首相が「北朝鮮の脅威からわが国を守るために大きく貢献している平和安全法制の法案成立に民進党が反対した経緯に言及し、民進党の前衆院議員らによる平和安全法制を容認する希望の党への合流を厳しく批判した」と報じ、希望の党との対決を第一に意識していた。
が、各世論調査の支持率が示す傾向は、公示前までは希望の党にブームの兆しがあったものの、終盤にかけては民進党を飛び出した立憲民主党に勢いが出ている。ならば、同紙24日付が出たころの「新党ブーム」は立憲民主を指すことになるが、同紙は立憲民主については言及がない。
昨年参院選では首相自ら「民共共闘」との戦いを宣言し、機関紙上でも「民共共闘」への批判が載った。が、今回は「新党ブーム」をひとくくりに批判し、民主党政権瓦解(がかい)の実例、5年間の自公政権の実績、二つの国難に対処する政策力をアピールしている。
連立を組む公明党の機関誌「公明」11月号は、巻頭に山口那津男代表インタビュー「衆院選難局打開へ断じて勝つ」、特集「超高齢・人口減少で招来する問題群への方策」を載せた。最大の争点を問われた山口代表は「日本の将来を担う人材を育てるために、消費税を財源として教育費の負担を軽減する」と述べ、後段に北朝鮮対応が出てくる。特集も少子化問題であり、二つの国難の優先順位は自公で交差している。
編集委員 窪田 伸雄






