苦戦伝えた「赤旗」 比例票求め連日大見出し
「共闘」歓迎するも痛痒
昨年の参院選で「民共共闘」を実現し、「野党統一候補」の支援に紙面を費やした共産党機関紙「しんぶん赤旗」(日刊)だが、今回の衆院選で中盤から終盤にかけて断トツに目立つのは「比例は共産党」の見出しと記事である。トップの大見出し(10日付、14日付、15日付、18日付、20日付など)はもちろん、紙面の随所に「比例で共産」「比例は共産」と呼び掛けている。
もちろん、衆・参院選では、共産ほかどの党も公認、推薦、支持を与えている選挙区候補の応援と共に比例区で自らの党への投票を呼び掛ける。が、今回は明らかに「赤旗」紙面の比重は、昨年の「野党統一候補」とは違って、比例票の訴えに移った。
これは危機感であることを同党は機関紙上で隠さない。むしろ1面トップであからさまに述べた。同党常任幹部会が16日に発した文書「市民と野党の共闘の勝利/日本共産党の躍進で安倍政権を倒そう」(同紙10・17)で、選挙情勢に言及している。
「今度の総選挙は、全国どこでも市民と野党の共闘の力でたたかい、新しい友人を広げ、絆を深めながら、いつになく明るく楽しい選挙戦になっているのが大きな特徴です。同時に、現在のわが党の宣伝・組織活動の到達点から判断すれば、現状ではまだ現有議席の確保に至っていないということを率直に言わなければなりません」
公示前勢力は21。果たして2013年から始まる「躍進」が止まるのか。
結果は間もなく出るが、自ら認めた苦戦は「民共共闘」のブーメランだ。共産党が執拗(しつよう)に民進党内に手を突っ込み共闘工作をしたあまりに、遂(つい)に民進党は割れた。共闘を拒否する希望の党からの出馬組、無所属、共闘を容認する議員らが結党した立憲民主党だ。
公示前勢力15と、共産党より小勢力でスタートした立憲民主を共産党は即座に「市民と野党の共闘」に迎え入れたが、政策が似通ったこの左翼新党とは支持層が重なる。
ちなみに共産党は、民進党所属候補の希望の党からの立候補を「共闘に逆流が起きた」と表現。「『希望の党』は自民の補完勢力/前原提案は『重大な背信行為』」(同紙9・29見出し)など、志位和夫委員長らが批判した。が、票は追い風が吹く新党・立憲民主へと「逆流」しつつある。
「共闘の発展へ共産躍進こそ」(同紙10・14)の見出しの記事では、「民進党が希望の党へ合流したもとでも、日本共産党は野党共闘の道を最後まで追求し、全国67の小選挙区で予定候補者を取り下げて、全国249の小選挙区で共産、立憲民主、社民の3野党の候補者を一本化することに貢献しました」と強調。選挙区での協力は「比例は共産」とバーターにしたいのだ。そこに不満がある様子が「赤旗」に見える。
疑心暗鬼も覗(のぞ)かせている。京都新聞に立憲民主の福山哲郎幹事長が京都の選挙区では前原誠司民進党代表(無所属で出馬)や希望の党の候補を応援すると発言し、これを「赤旗」(10・15)がベタ記事で拾い、にらみを利かせた。共闘関係にさざ波が立っている。
編集委員 窪田 伸雄