国連支配強める中国


米政府に対抗求める専門家

 中国は近年、国連の支配を目指して、人材を送り込むなど影響力を強化している。これを受けて米専門家らは、中国に対抗するための戦略の立案を米政府に呼び掛けている。

1月14日、ニューヨークの国連本部で、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)のロス代表

1月14日、ニューヨークの国連本部で、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)のロス代表による記者会見場に姿を見せ、抗議する中国外交官(中央)(EPA時事)

 国連での中国の行動が近年、大きく変わったことが専門家の間で指摘されている。これまで中国は、安保理常任理事国として拒否権を乱用する程度で、外交で指導力を発揮することはなかった。

 専門家によると、中国が国連支配への取り組みを強化したのは2017年。特に人権、貿易、デジタル通信、医療などの分野を管理する国連機関の指導的ポストに中国人を送り込むことを重視している。

 シンクタンク民主主義防衛財団のエミリー・ドラブリュイエール上級研究員はワシントン・タイムズとの電話会見で、トランプ大統領はこの3年間で米国の対中政策を一新したが、中国の国際機関での影響力強化には対抗策を講じてこなかったと指摘。この問題に取り組むために議会が「大統領に直接報告し、国家安全保障会議など官僚組織から独立した機関」を設置すべきだと訴えた。

 中国問題を専門とする同財団のクレイグ・シングルトン氏も、トランプ政権が国際機関への関与を弱める一方で、中国の台頭が目立っていると警告。「中国政府は、国連などの国際機関を自国の外交政策を進めるためのプラットフォームにしようとしている。…その一方で、反政府勢力、民主主義を抑圧し、ルールベースの秩序の空洞化を進めている」と警鐘を鳴らした。

 ブルッキングス研究所のジェフリー・フェルトマン研究員は先月、中国に関する研究報告で「国連はまだ米国の『ホームグラウンド』と言えるが、米国がそこから出れば、その後の空白に中国が入り込む」と、国際機関から距離を置く米国の政策に懸念を表明した。

 民主主義防衛財団の集計によると、中国は国際機関の人事で成功を収めており、中国共産党が推薦した候補がこの数年間、国連機関のほぼすべての選挙で勝利している。

 国連食糧農業機関(FAO)、次世代通信規格「5G」などのデジタル通信の技術的規格を決める国際電気通信連合(ITU)、国連経済社会局、国際民間航空機関(ICAO)、国連工業開発機関(UNIDO)のトップは中国人だ。

 UNIDOは近年、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」への支援を強化している。

 国際海洋法裁判所の判事(任期9年)にも中国人が就いたばかりだ。

 米下院共和党のタスクフォースは9月21日に公表した報告で、国連で中国が影響力を強めていることを強調、これには中国の政策への国際的支援獲得を目指す中国共産党中央統一戦線工作部が関与していると指摘している。

 報告は「この魔法の武器は、さまざまな形を持つが、国際機関や外国政府のエリートらを利用することが特徴。少しずつ、確実に国際機関を西側や普遍的価値観から遠ざからせている」と中国の戦略が効果を上げていることを強調している。

(ワシントン・タイムズ特約)