共産党9中総-空想主義的に党員を鼓舞
大会決議案に「選挙革命」など
「民主連合政府への道を開く大志とロマンある提起だ」――。日本共産党機関紙「しんぶん赤旗」11月14日付は、1面「日本共産党9中総終わる」の記事で、12~13日に同党本部で開かれた同党第9回中央委員会総会(9中総)において提案した第26回党大会(来年1月予定)決議案にこのような感想があったと志位和夫委員長が討論結語で述べている。
同紙に時々「ロマン」という言葉が載るが、他党機関紙では殆ど見かけない。9中総決議に基づけば機関紙読者は前大会時のおよそ85%で、日刊・日曜版あわせ120万台とみられる。党員は昨年の幽霊名簿整理で30万台に減じた。これを大会決議案では、党員50万、「しんぶん赤旗」日刊紙50万・日曜版200万にするという。「革命」は夢と冒険のファンタジーだと勧誘するのだろうか。
同紙同日付に織り込まれたブランケット別刷りで7㌻ある大会決議案は、「第1章『自共対決』時代の本格的な始まり…」と、参院選「躍進」の評価に始まる。民主党敗退で「『二大政党づくり』の動きが破綻し」、各新党などの「『第三極』の動きがすたれつつある」ことをもって、70年代、90年代の躍進期に存在した「自民批判票の『受け皿政党』」が、「しかし、今回は、そうした中間的な『受け皿政党』が存在しない」と断言。そして「『自共対決』という政党地図が、かつてない鮮やかさをもって、浮き彫りになっている」と美化した。
「ロマンある」決議案はロマンスなのか、いささか恋物語的に盲目的だ。煎じ詰めれば世界(政界)は自民と共産2人だけという暴論であり、「中間」を無視して「民主連合政府」とはよくも言えたものだ。しかも、参院選で共産党は当選8議席に過ぎない。同議席以上でも維新、みんな、公明、民主の4党も受け皿が「存在」するのだ。
それでも議席増で決議案は強気になった。反米反財界(「二つの異常」と表現)はいつものことだが、前回25回大会決議にあったリベラルなオバマ米大統領に一定の評価と期待を示す表記が消えた。安保条約廃棄はこれまでも触れているが、今回は3章(16)③として「日米安保条約廃棄の国民的多数派を」の一項をとって強調した。4章(23)に「『選挙革命』を発展させる」と、「選挙」に対して「革命」を打ち出した。
一方、問題の多い中国など社会主義国には「社会主義に到達した国々ではない」と批判し、「一党制」(共産党独裁)も「革命戦争という議会的でない道を通って政権についたことと関連がある」と述べ、革命批判とも受け取れる。その点、日本では選挙と議会を通して社会主義・共産主義を目指すからそのようなことはあり得ないと釈明する。
9中総結語によれば、ここが「踏み込んだ解明」で次の党大会決議案の目玉の部分という。が、むしろマルクスが「空想的社会主義」と呼んだ“理想社会”的な展望に近い印象だ。「ロマン」の正体はこれであろうか。マルクス共産主義から出発したソビエト、中国ほか社会主義国すべてに不合格判定をするなら、そろそろ主義が間違っていたと考えるのが筋である。
解説室長 窪田 伸雄