共産党の「国民連合政府」 「革命期」にしたい反安保デモ

党勢拡大のため大風呂敷

 日本共産党は革命への憧憬に駆られている。志位和夫委員長は、反安保法制デモを「一種の『市民革命』につながるもの」と鳥越俊太郎氏との懇談で語り、「国民連合政府」を提案した理由に挙げた(同党機関紙「しんぶん赤旗」10・3)。「日本の政治は歴史的激動の時期に入りつつある。この激動にふさわしい大志とロマンをもって頑張り抜くことを心から訴える」とは、党中央幹部会の決議「『戦争法廃止の国民連合政府』実現へ 参議院選挙勝利、党勢拡大の飛躍的前進のために全党が立ち上がろう」の末尾の一文だ(同紙10・7)。

 国会に群がったデモ隊の集団心理に野党議員も染まって、法案採決をめぐり物理的抵抗がエスカレートした。これを「歴史的激動の時期に入りつつある」ワン・シーンと捉えた共産党は、ついに「ロマン」の高揚を抑えられなくなったと見え、9月19日に安保法が成立するや、志位氏が同法廃止の一点で野党が選挙協力して樹立を目指す「国民連合政府」を提唱した。

 鳥越氏に語った「市民革命」も意味深長だ。党綱領「四、民主主義革命と民主連合政府」で述べられている「日本共産党と統一戦線の勢力が、国民多数の支持を得て、国会で安定した過半数を占めるならば、統一戦線の政府・民主連合政府をつくることができる。日本共産党は、『国民が主人公』を一貫した信条として活動してきた政党として、国会の多数の支持を得て民主連合政府をつくるために奮闘する」との段階入りを見極めたということだ。綱領では、この「民主主義革命」が実現したら「社会主義革命」の段階へと運動を進めることになる。

 が、綱領は「民主連合政府の樹立は、国民多数の支持にもとづき、独占資本主義と対米従属の体制を代表する支配勢力の妨害や抵抗を打ち破るたたかいを通じて達成できる。対日支配の存続に固執するアメリカの支配勢力の妨害の動きも、もちろん、軽視することはできない」と、あくまで反米・反財界・反日米安保体制の立場を示すが、志位氏は日本外国特派員協会で自衛隊・日米安保条約について、「国民連合政府」は安保法成立前の自衛隊法・日米安保条約を認めると取り繕っている(同紙10・16)。

 自衛隊や安保条約を認めなければ「国民多数の支持」を得られないとの情勢認識であり、まだ「民主連合政府」の提案は時期尚早のはず。それでも共産党は大風呂敷を掲げて、運動に「あらゆる知恵と力をつくす」(同決議)と意気込む。

 これは、通常国会の安保法案審議の期間とあわせた「大運動」(6月9日~9月30日)により、「入党決意が5051人」「日刊紙2610人増、日曜版1万444人増となった」(同決議)からで、党勢拡大の手応えがあったからだ。

 それでも、機関紙は2013年参院選時まで回復していないと同決議は記している。ならば、なおさらやめられない事情があり、デモによる人寄せと党員・機関紙拡大は当面終わらないだろう。

解説室長 窪田 伸雄