自民党の続投新体制 「総活躍」には人間育成を

長期安定は政策推進力

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記者会見を終え、撮影に応じる自民党の(右から)茂木敏充選対委員長、稲田朋美政調会長、高村正彦副総裁、谷垣禎一幹事長、二階俊博総務会長=7日、東京・永田町の同党本部

 自民党機関紙「自由民主」は大幅延長した通常国会終了と7日の党役員・内閣改造人事の節目を反映した紙面が連続した。1面見出しを拾うと「平和安全法制成立」「党大会に代わる両院議員総会」(10・6号)、「国民の命と暮らしを守る平和安全法制/佐藤正久党国防部会長に聞く」(10・13号)、「参院選必勝体制構築に向け、一致結束/課題解決で国民の負託に応える」(10・20号)、「“一億総活躍”社会の実現に全力/稲田朋美政務調査会長インタビュー」(10・27号)など。

 10月20日号は新執行部スタートの党役員人事を扱うが、命題の「参院選必勝」を前面に出している。安倍晋三総裁、高村正彦副総裁、谷垣禎一幹事長、二階俊博総務会長、稲田朋美政調会長、茂木敏充選挙対策委員長、佐藤勉国会対策委員長、細田博之幹事長代行が再任、新たな就任は山口泰明組織運動本部長、木村太郎広報本部長(リードから)と、ほぼ続投新体制だ。が、政治に成果を上げようとすれば、職務の継続は本来必然のこと。

 かつて自民党の内閣・党役員人事に「ポストたらい回し」の批判があった。その弊害は役職の在任期間が短くて政策の推進力が失われることだ。総裁に再選された安倍首相は第2次政権で5年半を継続し得るわけで、首脳在任期間がようやく普通の国並みになろうとしている。民主党が言った「官僚主導から政治主導」は長期安定政権で可能だ。

 安倍総裁再選で同党は安倍内閣の経済政策「アベノミクス」を「第2ステージ」に継続できた。稲田政調会長インタビューでは「1億総活躍」「GDP600兆円達成」などに触れている。大きな目標であり評価は難しい。ただ言えることは、文字通り1億が総活躍するには国民個々の育成が不可欠だ。結果責任の政治において各指標は気にせねばならないが、結果を生むのは人間であり、人材の育成や教育にかかる部分も大きい。

 稲田氏は「第2ステージ」に自民党らしい政策を進めるとして、「伝統を守りながら新しいものを創造する」改革、「教育基本法の改正、平和安全法制に続き、憲法改正」に取り組み「『日本らしさ』を取り戻すこと」、「経済大国から『道議大国』へと深化すること」「高い道徳性と倫理観」などを主張している。その上で、実学、科学、技能、技術を磨き、能力を発揮する人々の「活躍」が願われよう。

 混乱の中で成立した安保法をめぐる今後の課題について、佐藤正久氏は「わが党は国会審議を通じて同法制の必要性を訴えるとともに、平和安全法制整備推進本部(本部長・江渡聡徳衆院議員)の下に『平和安全法制理解促進委員会』(委員長・衛藤晟一参院議員)を設置し」、「特に来年夏の参院選までの間、すべての党員が周りの有権者にしっかり法律の中身を説明できるよう、引き続き研修会を行っていきたい」と述べている。安保法制を争点化する野党との論戦は参院選の行方を左右するだろう。

解説室長 窪田 伸雄