国政お構いなしの維新の内紛劇


 「第三極ブーム」を巻き起こした維新の党が分裂し、今や国政お構いなしで内紛劇を繰り広げている。大阪系と非大阪系の議員による理念・政策抜きの抗争は泥沼化の様相だ。この状況が続けばどちらも国民から厳しい審判を受けることになろう。

 政策なく罵倒し合う

 橋下徹大阪市長を後ろ盾とする大阪系の国会議員20人が一方的に「臨時党大会」と位置付けた会合を開催し、全会一致で維新の党の「解党決議」をした。参加者は今月末に橋下氏が立ち上げる新党「おおさか維新の会」に加わる予定だ。

 これに対して非大阪系の松野頼久代表ら執行部は「解党は無効」と確認。党は存続するとの立場で全面的に争う構えであると同時に民主党との連携強化を志向している。

 両者とも忘れるべきでないのは、国民不在になってはならないことだ。特に、3年前の総選挙では日本維新の会として国政に登場し54議席を獲得。昨年末の総選挙でも41議席を確保し野党第2党を維持し注目された。その背景には、憲法改正や集団的自衛権の一部容認、教育委員会改革の推進など重要政策で保守的な主張を展開し、政権に対しても「是々非々」の立場を敢然と貫いたことがある。

 橋下氏は「維新の党は日本の国にとって百害あって一利なし。これから潰(つぶ)しにかかる」とし「リセット」すると強調している。橋下氏に問いたいのは、自ら指揮して築き上げてきた政党の実績と有権者から得た信用をそう簡単に否定して「リセット」できるのかだ。

 5月の住民投票で「大阪都構想」が否決され政界引退を表明した橋下氏にとって、大阪府知事、大阪市長のダブル選(11月22日投開票)は確かに眼前の最重要事項だろう。橋下氏が2勝すれば「第三極」として勢いを盛り返す可能性はある。だが、どちらかの選挙で敗北すれば、大阪の地域政党にとどまることになり、「おおさか維新の会という国政政党をもう一回、いちから作り直す」とする橋下氏の夢は急速にしぼんでしまうことになろう。

 政党交付金の分配をめぐっても両者は一歩も譲らない。松野氏ら執行部側は政党助成法に基づき振り込まれた銀行口座の通帳と印鑑を持っておらず引き出せない。一方、それらを保持している大阪系は「国庫に返納する」との姿勢だが、双方が相手に資金を使わせないようにするため口座は凍結された。

 政党交付金は国民1人当たり250円の負担で、年間総額300億円余りを各政党に支給する。維新は10月、約6億6000万円を受け取った。交付金配布の主旨は企業・団体献金を縮小する一方で、政策本位の政党活動を支援することにある。それを政策そっちのけで罵倒し合うだけの姿は見苦しいと言わざるを得ない。

 民主連携で展望開けず

 執行部は民主党と「連携協議会」を通じて合併も視野に政策のすり合わせをするという。だが、外交・安全保障などの重要政策で党内をまとめ切れない民主党と連携してもかつてのようなブームは生じないし、展望も開けまい。

10月27日付社説