「プレ民」のデモ紙面 対案に憲法改正言うべし

反対だけでは共産党に流れ

「プレ民」のデモ紙面

安全保障関連法案に反対し、国会前で抗議するデモの参加者=14日夜、東京・永田町

 民主党の機関紙「プレス民主」9月4日号1面は、8・30国会デモの航空写真に岡田克也代表、古賀伸明連合会長の演説写真、参加者写真2枚と計5枚の写真に「国会取り囲み『みんなで安倍政権にNO!』権力の暴走を許さない。その先頭に立つ」の見出し。写真から8月30日デモの記事かと思ったが、岡田代表、古賀会長らが「呼びかけ人」の8月23日の集会で、「1万4千人の参加者が国会を取り囲んだ」というもの。

 記事と直接関係のない8・30デモの写真説明では、「市民団体が8月30日午後に開いた『戦争法案廃案!安倍政権退陣!8・30国会10万人・全国100万人大行動』の国会正門前集会で岡田克也代表は、『一緒になって安倍政権の歩みを止めよう』と訴えた」とある。党代表がマイクを握る機会があって載せることができたものだ。ただ主催者について、共産党機関紙「しんぶん赤旗」が「総がかり行動委員会」と頻繁に我が事のように書くのと違い“余所様”風。「行動委員会」には共産党系の全労連が含まれ、民主党のオーナー的存在の労組・連合と別である。

 そのような反対運動の中で、「廃案」と息巻いても、共産党のカラーに染まって存在感は埋没気味だ。集団的自衛権行使を一部容認した2014年7月1日閣議決定から、当時の海江田万里代表は集団的自衛権行使に反対する対決姿勢を示し、「安倍政権の暴走を許さない」と訴えてきたが、これは共産党の二番煎じである。

 案の定、同年12月衆院選や今春の統一地方選でも、この種の批判票は共産党に流れ、民主党は依然として厳しい選挙だった。反米反戦反安保の運動に乗った批判票と、かつて民主党が吸収した政権交代への期待票と、有権者の投票の動機は違うと言えよう。

 安保法制をめぐっては「プレス民主」の記事に少しだが「憲法改正」に言及した部分もある。8月7日号で岡田代表、坂田雅裕元内閣法制局長官、柳澤協二元内閣官房副長官補の鼎談(ていだん)が載るが、岡田氏が、「今回の議論は、国連憲章が認める武力行使を海外で行う『普通の国』を目指すのか」、「国際的な標準から見れば変わっているけれども、平和憲法の下で海外での武力行使には抑制的な国を目指すのか」の選択だと述べたのに対し、柳澤氏が「その議論の末にやり方を変えるのであれば、憲法改正の議論も出てくると思う」と応じ、坂田氏は「憲法9条に手を付けることは非常に難しいですが、ただ憲法は可変であり、わが国にふさわしいあり方を国民がみなで考えて選択するもの」と述べている。

 岡田氏は「安倍総理の下で憲法改正を議論をすることは大きな懸念があります」と議論を引き取っているが、首相のことよりも民主党の改憲の考えを示すべきだろう。「集団的自衛権はいらない」と党首討論で発言したとおりなら、国の自衛権を占領軍によってではなく自ら制限して半人前国家になる国家観だ。憲法改正で自衛権(個別的・集団的)を認める対案を示すのが筋である。

解説室長 窪田 伸雄