「公明」が共産批判 9条利用の革命戦略指摘

反日米安保・自衛隊解消で

 公明党の機関誌「公明」は5月号から7月号にかけて「日本共産党史の“暗部”」と題して上・中・下の連載を掲載した。日本共産党の機関誌「前衛」が2014年11月号から今年1月号にかけて連載した「公明党結党50年の裏面史」への反論だ。

 「前衛」は、自民党との連立、消費税率引き上げ、集団的自衛権をめぐる閣議決定と安保法制、創価学会との関係について公明党を非難した。共産党が他党攻撃をして存在感を示すのは常套(じょうとう)手段だが、自らが目指す共産主義については選挙や国会など公に向けて殆(ほとん)ど語らなくなっている。マスコミも、政府・与党側の政策や法案に対して賛成か反対かの野党動向でしか共産党を取り上げない。

 各党は共産党から攻撃されても反撃はしないようだ。票を奪われ、最も打撃を受けた民主党の機関紙に共産党批判が載ったことはない。結果的に独り共産党に批判を許す甘さは、選挙で共産党が野党の中で一人勝ちした一因でもある。

 批判に応える反論の形だが、「公明」は共産党の政策を問題にした。そのうち、後半の通常国会で対決法案となっている安全保障関連法案をめぐって、同連載「中」(6月号)は、「当面・9条完全実施(自衛隊解消)、先行き・改憲し『自衛軍創設』めざす矛盾」という副題で、共産党の安保政策を説明しながら批判している。

 同誌は、共産党の「路線・政策の根幹となっているのは『六一年綱領』」で、①資本主義の枠内での「民主主義革命」②社会主義革命の「『二段階連続革命』論を掲げている」と指摘。「赤旗」(68年1月8日付)に発表された「日本共産党の安全保障政策」から、共産党は日米軍事同盟と自衛隊を解消して、「社会主義日本の憲法を制定し、『必要適切な自衛の措置』すなわち自衛軍を創設するとしている」と述べている。

 その上で、同誌は共産党にとって憲法9条は日米同盟撤廃と自衛隊解消のために「完全実施」する“過渡的”なものと不破哲三氏(共産党前議長)の著書などを引用。「当面・現憲法擁護(平和的条項の完全実施で自衛隊解散)→将来・現憲法廃止(=9条廃止)し、社会主義憲法下で自衛軍創設――というのが日本共産党の確固とした革命戦略である」など、共産党の文献で説明した。

 「赤旗」日曜版には自衛隊出身者を登場させ、安保法案に「戦死」云々(うんぬん)の見出しを躍らせている。が、共産党の安保政策を実行に移した場合、「公明」同連載が「国内外に大激動を及ぼすことは必至であろう。日米安保条約廃棄一つを見ても、日米関係や国際社会に及ぼす影響は計り知れないものがある。その上で、自衛隊を解消するとしており、同党の民主連合政府提案では、『防衛省設置法、自衛隊法を廃止し、違憲の自衛隊をすべて解散させる…』」と指摘するように、全自衛官をクビにするなど非現実的な政策は国家破綻をもたらすものだ。

 共産党が共産主義を目指す綱領を持つからには、とりわけ安保問題では体制選択からの判断を加える必要がある。

解説室長 窪田 伸雄