反安保で共産「大運動」 「戦争法案」と扇動に奔走

「赤旗」読者拡大を狙う

 日本共産党は米国と財界を資本主義の権化とみて敵視しており、米国の軍事行動には「侵略戦争」とレッテル貼りし、これに日本がお伴するかのように安全保障関連法案をめぐって批判している。

 同法案を「戦争法案」と呼び、機関紙「しんぶん赤旗」で盛んに取り上げるため、あたかも日本が地球の裏側まで大砲を撃ちに行くイメージを植え付け、デモなど反対運動を組織し、それを大きく記事にしている。

 例えば、同紙6月14日付1面と最終面(16面)はデモ行進、集会の写真特集の体裁だった。「『戦争法案必ず止める』列島響く」の大見出しで1面は東京、京都の集会などを取り上げ、最終面に千葉、奈良、長野、福岡、宮城、静岡でのデモ行進を宣伝している。

 が、このような運動も、冷戦構造崩壊後の国際新秩序の模索から我が国が国際協調主義を掲げて国際貢献策に取り組み始めてから繰り返し見られた光景だ。1980年代に世界第2位の経済大国として応分の国際貢献を国際社会から求められ、90年代に入り湾岸危機が勃発すると、自衛隊を海外派遣するかしないかの決断を迫られた。

 もともと、共産党は日米安保条約と自衛隊の解消を追求しており、国連平和維持活動(PKO)協力法、周辺事態法、テロ特措法、イラク復興特措法、海賊対処法など自衛隊に関わる法律にことごとく反対してきた。また、このような運動で党勢拡大を図ってきた。

 安保法案にも「戦争法案」と誇張して反対しており、党勢を拡大するためエスカレートさせていくだろう。事実、共産党は9日の幹部会で、安保法案反対運動と党勢拡大をリンクさせる9月30日までの「大運動」を決議した。

 このうち党勢拡大について「赤旗」(6・10)は、青年・学生党員・労働者の党員を増やすとともに「『しんぶん赤旗』読者拡大は、全党的に一刻も早い前回参院選時の回復・突破をめざし、『大運動』期間中に昨年の総選挙時を回復・突破する」と伝えている。

 「躍進」を自賛する最近の選挙結果と裏腹に、党勢回復に繋(つな)がらず機関紙部数が減っていっていることが改めて指摘されている。総選挙が行われたのは、まだ半年前の昨年12月のことだが、それからも機関紙部数は減っていた。その程度は前回参院選時を下回ったというのだ。ちなみに、前回の参院選があった2年前の2013年7月に、「赤旗」は日刊紙・日曜版あわせて約3万部を減らした。

 昨年1月の党大会で日刊紙・日曜版あわせた部数は124万1000部と発表され、4月の統一地方選の総括では「今回のいっせい地方選挙を、前回比で、党費納入党員数で95・0%、『しんぶん赤旗』日刊紙読者数で88・8%、日曜版読者数で86・4%でたたか」ったと述べている。日刊紙は20万部程度、日曜版は100万部の大台が微妙と考えられる。

 機関紙部数は党財政に直結するだけに、共産党は「大運動」で延長国会の会期を通じて反安保法案の扇動に奔走するだろう。

解説室長 窪田 伸雄