原発問題と「自由民主」
事故対策関連記事が増える/五輪招致で首相が国際公約
自民党の機関紙「自由民主」に原発事故対策関連記事が載る頻度が増えた。東日本大震災による大津波で福島第1原発事故が発生して2年余。事故発生当時は政府・民主党の施政下で野党だった自民党も対策がなっていないという具合に批判したが、政権を奪還すると難題処理の責任を負う立場になった。
政府・与党となって原発問題で攻められる側となり、夏の参院選まで大型選挙が続いた間は争点にしたくない論点だったためか、「自由民主」はこの問題をあまり取り上げなかった。
ところが9月7日、状況は変わった。2020年夏季五輪招致をめぐり東京は同原発事故と汚染水漏れで不安視される空気があったが、国際オリンピック委員会(IOC)総会でのプレゼンテーションで、安倍晋三首相が同原発汚染水漏れについて「状況はコントロールされている」と述べ、政府として今後の対策に太鼓判を押した。五輪招致はめでたく東京に決まったが、注目の舞台での発言は国際公約に等しい。
その後、「自由民主」は9月24日号に「東電福島第一原発汚染水問題 山本拓党資源・エネルギー戦略調査会長インタビュー」の1~2面展開をはじめ、10月1日号2面で党東日本大震災復興加速化本部、党原子力規制に関するPT(プロジェクト・チーム)、10月8日号2面で党東日本大震災復興加速化本部原発事故被害者の生活支援及び事故収束等に関する委員会、3面で党資源・エネルギー戦略調査会と経済産業部会の合同会議、10月15日号で党原子力規制に関するPT有識者ヒアリング――など、党内各機関における原発事故対策関連の議論をこまめに報じるようになった。
9月24日付インタビュー記事のリードは、「東京電力福島第一原発の汚染水の問題を今後も確実にコントロールし、解決に繋げることは日本の国際社会に対する責任と言える」で始まる。山本調査会長は、「先日のIOCの総会でも、汚染水問題に対する国際的な関心の高さを実感しました。その中で、安倍晋三総理が汚染水のコントロールについて発言しました。わが党と政府が一体となって具体的な対策を迅速に講じていくのは当然です。間違っても、民主党政権のような過ちを繰り返すことがあってはならないでしょう」と強調している。
また山本氏は、現行では「国費を投入するにしても、東電に対する補助金として出すことしかできないため、汚染水対策特措法(仮称)を制定して、名実ともに国が責任を持って対策を立てられる仕組み」を検討するほか、「想定されるリスクを広く洗い出し、『多重防御』によって」危険性に備える、「海側の遮水壁」など汚染水対策の迅速化、「廃炉に向けた過程で高濃度の汚染水を発電所の敷地の外へ出さないよう国が責任を持つ」などの党の申し入れを政府にしたことを報告した。
この問題で民主党政権の「過ち」の指摘は避けて通れないが、今後は自民党の政権の実力を示す時だ。
解説室長 窪田 伸雄





