公明党の党外交

中韓関係改善を買って出る/尖閣で折れるなと有識者

 公明党の機関誌「公明」11月号は特集「『安定の政治』で挑む政策課題」で外交について党外交の重要性を指摘した。特集冒頭の「『安定の政治』で目指すもの――山口那津男代表に聞く」「『大衆とともに』の公明が連立にいればこその『質の安定』」のインタビュー記事で山口氏は、「質の安定」という言葉を用いて中国、韓国との関係改善に意欲を示している。

 インタビューで山口氏が語る「質の安定」とは、「自民党と公明党が違った持ち味をお互いに補い合いながら生かしていく」ことだ。持ち味が違うから幅広い民意を受け止められ、その上で「合意形成をしていける力が、連立政権にとって最も重要」と述べており、「質」は政策でなく連立の「質」を指している。

 この指摘に照らせば、民主党中心の前政権の連立の「質」はなってない。それぞれ党やグループが理念・公約・政策に「質」を追求したため、社民党は連立を離脱、消費増税をめぐっては民主党、国民新党とも内紛と分裂を招いた。

 外交課題だが、山口氏は、「昨今、残念なことに日中、日韓関係の悪化が指摘されている。そうした中で、中国、韓国、そして日本でも政権交代や国政選挙が相次ぎ、ともすればナショナリズムに走りがちで、さまざまな圧力により政治的に揺さぶられがちだった。しかし今、各国の新政権が走り出し、新たな基盤ができつつある。これからがチャンスだと思う」と党外交の役割を買って出た。

 前政権で起きた領土トラブルはナショナリズムの火に油を注いだ。中国、韓国の反日が過剰となり、自民、公明に政権が移り安倍晋三首相が就任しても首脳間の顔合わせに至らない。自身の9月訪米について述べる山口氏は、「日中、日韓は対話で平和的に発展させてもらいたい、そういう外交努力を、という声も多くあった」など米国側の空気を伝えている。

 特集では「大きな成果得た党青年訪中団」の記事で党青年訪中団の9月訪中を谷合正明党青年委員会顧問が報告した。中国側の歓迎漂う内容だが、その中でも尖閣問題では日本側の筋を通した主張をしたという。「外交上の問題があったとしても、一つ一つ対話を通じ、大局観に立って、冷静に解決に真摯な努力がなされなければなりません」(谷合氏)との訴えは率直だ。ただし、中国側には自民党の憲法改正や集団的自衛権行使容認を押さえる狙いもあろう。

 一方、特集ではPHP総研国際戦略研究センター主任研究員の前田宏子氏が「アジア地域秩序に直結する尖閣問題~日本は忍耐強く、強硬ではないが折れない外交を展開していくべき~」との論文を書いている。前田氏は、「南シナ海や尖閣でいま中国がやろうとしているのは、増大する国力を利用し、単独的かつ強制的に自国の主張を押し通すことである。そのような手法が功を奏すると中国が思うようになってしまっては困る」と懸念する。

 また、「尖閣問題は必ず平和的に解決しなければならないが、そのためにも逆説的ではあるが、日本自身が相当に高い防衛能力を保持し、堅固な日米同盟を維持することが死活的に重要である」との指摘は正鵠を射ている。この点の「質の安定」では自民党の持ち味に期待したい。

解説室長 窪田 伸雄