同性カップル証明、結婚制度を混乱させるな


 東京都渋谷区が同性愛のカップルに対して「結婚に相当する関係」を認める証明書を発行するための条例案を3月区議会に提出することを決めた。

 憲法上、結婚を男女に限定するわが国で、このような証明書は前例がない。

 渋谷区が来月条例案提出

 他の自治体でもこれに追随する動きが出るなど波紋が広がっている。だが、家族についての価値観と社会の成り立ちの根幹に関わる重大問題であるにもかかわらず、区民や区議会のコンセンサスを得る十分な努力がなされないまま発表するという区の手法は危険である。

 条例案提出には、同性愛者をはじめとする、いわゆる「性的少数者」や左派の人権活動家の働き掛けがあったことがうかがえる。リベラルなメディアの後押しを狙ったのかもしれない。いずれにしても、区の動きの背景には偏った思想があることが推測される。

 わが国の社会を支えているのは夫婦を核とした伝統的な家族制度である。これを守ろうとする人々からの反発が高まるのは必至だ。今回、条例案を唐突に発表したのは、それを恐れてのことだろう。行き過ぎた行政にブレーキを掛けるのは議会の役割だ。渋谷区議会には、賢明な判断を下すことを期待したい。

 条例案は「男女の別を超え、多様な個人を尊重しあう社会を推進する」としながら、同性パートナーシップを「結婚に相当する関係」と認め、証明書を発行するとしている。アパートへの入居や入院したパートナーへの面会を家族ではないとして断られた時に、この証明書を使って夫婦と同等に扱うよう求めるという。

 世界に広がる「同性婚」容認の動きに追随しようという内容だ。しかし、わが国の憲法は「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有する」と規定している。つまり法律上、同性婚は認められていないのだから、同性カップルが「結婚に相当する関係」であると第三者に認めさせることは憲法違反の疑いがある。

 同性愛者の権利を結婚関係にまで広げようとすることは、渋谷区だけでなく日本の将来をも左右する問題だ。社会の基本を家族に置くのか、それとも個人に置いて欧米のように同性婚まで認める方向に進むのか。区議会はその分岐点に立っていることを自覚して論議してほしい。

 夫婦や家族は法律上、慣習上さまざまな保護が与えられている。それは2人が愛し合っているからだけではない。将来の社会を担う次世代を生み育てるからだ。現在、少子化が顕著になったわが国で、若い夫婦に子供を生んでもらうためのさまざまな施策が打ち出されているのは、夫婦は社会、国家の発展に結び付く存在だからである。

 家族を強くする施策を

 男女の愛とともに、結婚の核心とも言えるこの点に目を向けずに、同性でも愛し合っていれば夫婦と同等とするのはあまりにも浅薄であろう。少子高齢化で、社会保障制度の存続が危ぶまれる現在、行政が傾注すべきは一夫一婦の結婚制度を混乱させることでなく、家族を強くする施策ではないか。

(2月21日付社説)