自ら考える防災教育

 私は防災教育に取り組む財団に関わっている。自分の身は自分で守ることを学ぶことが、将来、自分の国は自分で守るという当たり前のことを理解する縁(よすが)になればと願っている。同財団は今年4月に名称を防災教育推進協会に変更し、理事長も山岡耕春名古屋大学大学院環境学研究科附属地震火山研究センター長・教授に交代した。

 現在、防災教育は学校現場では、総合学習の時間や課外学習の中で行われているだけで「教科」とはなっていない。防災についての専門の先生もほとんどいない。

 そこで財団では4年前から「防災教育プログラム」を開発し、防災意識の定着と自分の生命(いのち)は自分で守る力を身に付けさせるため、小中学生に対する防災教育を日本全国で推進してきた。同プログラムは、今までの受身型の防災教育から、自ら考え行動しながら取り組む防災教育として拡がりをみせている。

 平成27年度は約6000人が参加し、12自治体(東京都荒川区・目黒区、栃木県さくら市、茨城県稲敷市、埼玉県吉川市、神奈川県座間市、静岡県浜松市、岐阜県各務原市、大阪府泉佐野市、和歌山県海南市・広川町・串本町)で費用を予算化し、公立の小中学校に導入している。今年はさらに予算化する自治体が増える予定だ。

 「防災教育プログラム」を導入している自治体の1つである東京都荒川区では、区立中学校に「防災部」を創設するなど、地域防災の担い手の育成に関わる取り組みが評価され、一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会主催『ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)2016』において「荒川区(中学校防災部の創設)」がグランプリを受賞している。

 私立学校も北は宮城県の学校から南は鹿児島県の学校までが参加し、学校同士の交流も活発だ。「防災教育プログラム」に参加している東北の被災地の学校を修学旅行で訪問する学校などもある。

 「防災教育プログラム」に参加した小中学生の中から、災害大国・日本の防災を担う人材が現れることを期待している。

(濱口和久)